どんなリスクがあるのか、そのリスクの大きさはどの程度なのかを評価できていないとしたら、適切な法制度は設計できないことになります。
政府としてはAI規制を緩めることで海外のAI研究開発拠点が日本に集まるとの期待もあったようですが、実ビジネスと研究開発でAI規制を分けている国は多いです。少なくとも適切なAIの研究開発であれば、欧州を含めて海外でも実施可能であり、日本に拠点を移す理由にはなりません。その結果、日本には適切とは言い難いAIとその研究開発ばかりが集まるおそれがあります。
日本はAIのリスクや責任に
関する議論を避ける傾向あり
また、日本がAIを産業化するのであれば、そのAIは現実世界で使われる必要があります。そのときAIに求められるのは安全性と信頼性です。そうしたAIを作るときに必要なのは、キラキラした最先端技術ではなく、実績のある技術の組み合わせであることが大半です。その場合、安全性と信頼性に関する規制があっても、その研究開発もビジネスも阻害されることはないはずです。
日本のAI研究開発で懸念されるのは、イノベーションや研究開発を阻害するという主張から、AIのリスクや責任に関する議論を避ける傾向があったことです。そのため、企業が開発したAIを現実世界で利用する際に、どのようなリスクがあるのかが明確でなく、AIが問題を引き起こした場合の責任分界点も不明確です。
この状況では、AIを現実世界で利用する企業の不安は払拭されませんし、同時にAIに対する社会的受容性も高まりません。結果として、AIに対する規制を避けたことが、AIの振興をむしろ遅らせるおそれがあります。
また、国際競争力の面でも、特に米国がAIの品質に関わる基準を課した場合、安全性も品質の基準のない日本は、AIそのものだけでなく、日本のAIを組み込んだ製品も不利になる可能性があります。
ところで、日本では「規制はイノベーションを阻害する」という論調がありますが、本当でしょうか。1970年代後半、米国が厳しい自動車排ガス規制を課した際、イノベーションを重ねて最初にその規制に適合したのはホンダであり、他の日本の自動車メーカーも続きました。これが今日における日本の自動車産業の世界的地位を築いたといえます。







