上位層のAIビジネスの成長は
「確保できる計算能力」に制約される
AIバブル収縮後の予測は容易ではありませんが、ドットコムバブルの経験から示唆が得られます。収縮前は多くの企業が乱立していましたが、収縮後は業界の主導権が通信回線事業者など下位層から、サービス事業者など上位層へと移り、寡占化が進みました。同様にAI分野でも再編が進み、少数の大手事業者が主導権を握るとみられます。
ただし、上位層のAIビジネスの成長は「確保できる計算能力」に制約されます。アルトマン氏はAIバブルを指摘する一方で「計算能力の不足」を強調し、AMDへの出資やエヌビディアとの提携などを通じて、巨額の計算インフラ投資を進めています(※8)。エヌビディアから最大1000億ドルの投資を受け、10ギガワット級のデータセンターを構築する計画も発表しています(※9)。
『2030 次世代AI 日本の勝ち筋』(佐藤一郎 日経BP)
ただし、前述のように電力供給に制約がある以上、AIの成長も電力供給能力に縛られます。複数拠点への分散や規模縮小を余儀なくされる可能性もあり、また電力事業者側の影響力が増す構図も想定されます。
最後に、AIバブル収縮後を占ううえで重要なのは「どこでAI処理を行うか」です。現在、学習処理は大規模データセンターで行われていますが、推論処理(判断・識別など)はエッジコンピューティングを含め分散化される可能性があります。
これにより通信遅延が短縮され、産業制御・医療・車載などリアルタイム性を要求する分野への展開が進むでしょう。加えて、データ主権やプライバシー保護の観点からも、利用者側のデータを外部に出さない設計が重視されます。ただし、エッジ側での推論処理はタスクが限定されるため、専用半導体の採用が増えると考えられます。
いずれにせよ、AIバブルの行方を見極めることは容易ではありませんが、日本の「勝ち筋」を考える上では、バブル収縮後にどのような産業構造変化が起きるのかを予測し、その準備を進めておくことが重要です。それにより、AIバブルの縮小を逆にチャンスに変えることもできるはずです。
※8 日本経済新聞 2025年10月7日
※9 10ギガワットは約800万世帯分の電力に相当するとされています。







