『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第46回では、IPO(新規上場)による社内環境の変化について解説する。
「創業時のメンバーはすべて会社を去る」
東京・渋谷のTシャツ専門店のオープンから3年強で、一大アパレル企業のオーナーとなった主人公・花岡拳。創業時の出資者である塚原為ノ介の提案もあり、自社のIPOを決意する。
塚原の紹介で会った証券アドバイザーの牧信一郎に上場に関する相談をしたところ、社内環境が変化し、特に人間関係が崩壊しかないと言う。、場合によっては「創業時のメンバーはすべて会社を去る」と、くぎを刺された。
そのため社内の幹部メンバーたちにも上場に関して話をしない花岡。しかしその空気を察して、幹部の大林隆二、日高功、菅原雅弘の3人は「新しい社員がたくさん入ることで、自分たち古参が追い出されるのではないか」と懸念し、上場に反対することで意思を固める。
そんな会話がなされているとつゆ知らず、牧との対話を進める花岡。牧から「創業時のメンバーが会社を去っても、自身でふんぎりをつけて会社の成長を続けられるのか」と、経営者としての人間力を問われるも、余裕の表情を見せる。
「上場しても元からの従業員誰一人として辞めない。全員ついてくる…これくらいの自信がなくてなにが経営者だ」
スタートアップと上場企業「求められる人材」の決定的な違い
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
証券アドバイザーの牧が花岡に再三語った「創業時のメンバーはすべて会社を去る」というのはつまり、「上場すると人が辞める」ということではない。「上場によって“評価の物差し”が変わる」ということだ。
どんな企業であれ、創業間もない頃というのは認知も、資金も限定的だ。だからこそ人(社員)の力に頼ることが多い。スキル面で多少の難があったとしても、当事者意識や、仕事への覚悟があり、ゼネラリストで、トップの方針を「察する」ことができるといった、いわば定性的な軸で評価できる人こそが求められる。
その一方で上場して知名度が上がり、資金も以前より潤沢になり、さらに組織も確立してくれば、部署ごとに求められるスキルを持ち、制度に沿って働くようになる。
すると、業務が仕組み化され、再現性のある行動や判断ができ、スペシャリストのように定量的な軸で評価できる人が求められる。
牧の真意は、会社が“個人の腕前”ではなく“組織の性能”で評価されるフェーズに入る覚悟を持て、ということだ。そしてそれに対する花岡の「誰一人辞めない」という言葉は、組織のステージが変わる中でも価値を出し続けるという、自身や仲間への問いかけだとも言える。
牧との会議を重ね、いよいよ幹部メンバーに上場の計画を打ち明ける花岡。だがミーティングの場で花岡は、幹部たちの冷めた感情を「冬の嵐」として感じ取るのだった。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







