『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語るのは、推薦入試専門塾リザプロ代表で本書の著者の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回の記事では、名門高校の学生が東大を目指さなくなっている理由について、孫氏と、学歴研究家・じゅそうけん氏の特別対談をお送りします。
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東大を目指す高校生が少なくなっている
じゅそうけん氏 最近、名門中学・高校の間で「東大合格者数の減少」がはっきり見えるようになってきました。たとえば女子御三家の一角である桜蔭高校は、2022年度に77名だった東大合格者数が、2025年には52名まで減っています。奈良県の西大和学園も同様で、79名から44名と、ほぼ半減です。
この数字だけを見ると、「学校の学力が落ちたのでは?」という見方も出てきますが、実態は少し違いますよね。むしろ、トップ層ほど東大を志願しなくなっている。特に医学部志望が増えている印象があります。
孫辰洋氏(以下、孫氏) ありますね。特に桜蔭高校をはじめとする女子校は、その傾向がかなり強いと思います。自分がこの背景として大きいのは、家庭環境が比較的安定しているケースが多いという点だと思っています。
なぜ東大を目指さないのか
孫氏 実際、面談でお母さんとキャリアの話になることも多いんですが、そのときに、こんな言葉を聞くことがあります。
「私も、若いときに何か資格を取っておけばよかったなって思うんです」
「子育てが落ち着いた今、もう一度働こうと思うと、やっぱり選択肢が限られてしまって……」
こういう話を、すごくリアルなトーンでされるんですよね。決して不満があるわけではない。でも、「戻れる場所がある安心感」は、やっぱり欲しかった、と。一方で、まったく逆のケースもあります。お母さん自身が医師だったりすると、
「正直、医師でよかったと思っています」
「出産や育児で一度キャリアが止まっても、また戻れる」
「専門職だから、環境が変わっても仕事を続けやすい」
と、かなりはっきり言われることも多い。
こうした家庭で育つと、子どもはものすごく現実的になります。「好きなこと」や「憧れ」だけで進路を考えるのではなく、「将来どう生きるか」「人生の途中で何があっても戻れるか」という視点で、進路を見ている。だから、「東大に行くかどうか」よりも、「資格を持てるかどうか」「手に職が残るかどうか」を重視するようになる。医学部志望が増えているのは、学力の問題というより、家庭の中で交わされているこうした会話の影響が大きいと思います。
じゅそうけん氏 確かに、資格系の学部の人気はかなり高いですね。医学部進学人気・薬学部進学人気は顕著なように感じます。つけくわえると、東大文系→就職というルートは、出産を考える女の子たちだと今の時代だと「キャリアが一度切れてしまう」リスクを感じる家庭も多い気がします。家庭が円満であれば特に、子どもは作りたいと思う人も多いでしょうから、キャリアプランの中に出産を入れ込みやすい職業が人気になりますよね。



