目に入るだけで、脳は疲れる

 人の脳は、処理する情報のうち約8割は視覚から入るといわれます。

 目の前に積み上がった資料、カラフルな付箋、読みかけの本……。それらはすべて、脳に「これも気にして」「あれもやらなきゃ」と語りかけています。声は小さくても、数が多ければ、脳のエネルギーは分散され、思考の焦点がにじんでいくのです。

「どんな景色が目に入っているか」で、脳のエネルギー配分が決まってしまいます。

 実際に、散らかったデスクの写真と繁華街の写真にある“モノや色の数”を数えてみると、どちらも近い情報量でした。散らかったデスクは、いわば繁華街の真ん中で仕事をしているような状態と近いのです。

 静かな海辺で作業をする場合と比べれば、同じ作業でも集中の質がまったく違うのではないでしょうか。

 プリンストン大学の研究では、周りに余計なものが多いと、脳が必要のない情報まで処理しようとして疲弊し、思考や判断のスピードが落ちることが示されています。

 また、カリフォルニア大学の研究では、一度注意が途切れると、再び集中するまでに平均20分ほどかかることが明らかになっています。

 もうひとつ、集中を妨げるのが「やりかけの仕事が目に入ること」です。

 未完了の書類やメモが目に入ると、脳はそれを「まだやるべきこと」として記憶に残し、無意識のうちに注意を引き戻します。これは心理学で「ゼイガルニク効果」と呼ばれる現象です。やりかけの案件は視界の外へ移動させることが大切です。

 人の集中力には限りがあります。

 本来「考える」「判断する」「創造する」ための脳のエネルギーを最大限に生かすには、余計な情報処理に浪費しないことが大切です。

 “見えているだけで、脳は処理している”―。無意識の処理を減らすことこそが、集中力を取り戻す最も現実的な方法です。

 だからといって、「片づけて」「物を捨てて」という話ではありません。ここでいう「整える」とは、脳が扱う情報量を減らすことが目的です。