全車両の1日あたりの平均売上高は10万円以上。販売パートナーによっては20万円を超えるという。ただし、高齢者に商品を押しつけるような営業をしないのがとくし丸流だ。創業者の住友達也氏は「利用者に無理に商品を売りすぎないというのも、長期的な関係性を築くのに大切なこと」と話す。
かつて移動販売といえば、店舗に行けない顧客の足元を見て、品質が悪い商品を割高な価格で売ったりする業者も多く、竿竹商法などの消費者相談も少なくなかった。
住人が安心して買い物できるよう
信頼関係を築くドライバー
『なぜ野菜売り場は入り口にあるのか スーパーマーケットで経済がわかる』(白鳥和生、朝日新書)
とくし丸では、たとえばこんなケースがあった。みそを買いたいという1人暮らしの高齢者がやってきたが、積んでいるのは容量の多い商品だけ。1人暮らしでは使いきれないと考えたドライバーは「今日は我慢して。次に来るときに少ない容量の商品を積んでくるから」と対応したという。菓子を買い込む顧客に対して、「そんなに食べると体によくないよ」と声をかけることもある。同じ地域を顔見知りのドライバーが担当するからできるわざだ。
地域のスーパーマーケットにとっては、店舗が成り立たない商圏の住民にも負担が少なく商品を届けられるメリットがあり、社会貢献が求められる時代に合ったビジネスといえる。大手のイトーヨーカ堂なども、とくし丸事業に取り組んでいる。
関西スーパーマーケットは2017年1月に兵庫県伊丹市の中央店で始め、2025年時点で30台ほどを運行する。山形県が地盤のヤマザワ、山口県防府市に本社を置く丸久もとくし丸を走らせ、手薄な店舗網を埋めている。安心して買い物ができる環境を整えることこそが、超高齢社会における小売業に課せられた社会的責任のひとつだ。







