26年版・倒産危険度ランキング【危険水域408社】 過剰債務企業に迫る「最終審判」#2Photo:PIXTA

インフレに伴う節約志向の広がりと「最低賃金1500円」に向けた賃上げ圧力が、小売業界を追い詰めている。人件費増と価格競争の板挟みに陥り、利益を削り取られる企業が後を絶たない。特集『26年版・倒産危険度ランキング【危険水域408社】 過剰債務企業に迫る「最終審判」』の#2では、小売業界の倒産危険度ランキングを検証。“危険水域”にランクインした23社の顔触れを明らかにする。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

最低賃金引き上げが小売業界を直撃
逆風下で「明暗」の二極化が顕著に

 小売業界は今、「売り上げは確保できても、利益が残らない」という構造的な危機に直面している。

 背景にあるのは、止まらないコスト増だ。2025年度の最低賃金は全国加重平均で1121円と、前年度より66円引き上げられ、過去最大の引き上げ幅となった。パート・アルバイトへの依存度が高い小売業にとって、最低賃金の大幅な引き上げは経営を直撃する。政府は「20年代に全国平均1500円」を目標に掲げており、人件費負担は今後も右肩上がりで増え続けることが確実視されている。

 本来であれば、コスト増は価格に転嫁して吸収すべき局面だ。しかし、小売りの現場では必ずしもそれが容易ではない。

 物価高で生活費がかさむ中、消費者の財布のひもは固くなっている。「買う頻度や量を減らす」といった生活防衛型の節約志向が広がっており、企業側には「値上げをすれば客離れが起きる」という恐怖がある。かといって価格を据え置けば、利益が削られる。まさに板挟み状態だ。

 価格転嫁の難しさはデータにも表れている。帝国データバンクによると、企業がコスト上昇分を販売価格にどれだけ反映できたかを示す「価格転嫁率」は、25年7月時点で39.4%に低下した。これは22年12月の調査開始以来、過去最低の水準である。サービス・小売業ではこの傾向が顕著であり、利益が痩せ細っていく構図から抜け出せない企業が多い。

 こうした逆風下において、小売り各社の間では明暗の二極化が鮮明だ。同じ業態でも、利益率が高いプライベートブランド(PB)を強化したり、セルフレジなどの省人化投資に成功したりした企業は増益を維持している。一方、対応が遅れた企業は人件費と金利上昇の波にのみ込まれつつある。

 今回、ダイヤモンド編集部は、逆風下の真っただ中にある小売業界を対象に倒産危険度を検証した。その結果、23社が“危険水域”にランクインしたことが判明した。次ページで、その顔触れを紹介していく。