動画はこの後、「母親は諦めていたわけではなく、最後の1カ月で勇気を振り絞って区役所の福祉窓口に生活保護を相談しに行ったが、親戚に助けを求めなさいと断られた」という内容が語られて終わっている。これも事実無根である。

 これと似た内容の動画はYouTubeにも投稿されていた。餓死や役所で生活保護が断られたという内容は同じだが、この動画の場合はさらに、別の親子3人の写真が、まるでこの事件の母子かのように載せられていた。

 この動画もまた「今年1番腹が立った」「この件もっとニュースで流してほしい!」「オールドメディアはだんまり」などのコメントが書き込まれている。フェイクだと指摘しているコメントも確認できたが、そのコメントに対してフェイクだと反論するコメントも見られた。

まさか嘘だとは…
思い込みで見誤る「脚色」のワナ

 これらの動画は、福岡市が開示請求すると発表した後も公開され続けている。

 1月6日に報道されたニュース記事に当たれば、そもそも餓死ではないことはわかるはずである。また、動画にあるニュースのテロップをよく見れば「無理心中」と書かれていることがわかるはずである。

 しかし、ディテールが妙に生々しい動画を見て、まさかこんな嘘をつく人がいるわけないと信じ込んでしまう人が多いようだ。

 繰り返すが、動画の内容は大変雑なものだった。

 ニューステロップとナレーションに矛盾があったり、母子の年齢が違っていたり、といったあまりの雑さに思わず、いざというときに言い逃れるために、あえて情報をずらしているのだろうかと思ったほどだ。

 しかし似たような「ニュース動画」をいくつか見るうちに、これはAIに自動で情報を足させているのではないかと思うようになった。こういった動画の投稿主は、似たような動画を量産して再生数を稼いでいる。

 音声や字幕も自動でつけたと思われるものだ。一つ一つの動画に個性やこだわりは見られず、センセーショナルなキーワードを強調している。そして脚色されたストーリー性がある。