ロレックスはETAへの技術的な依存から脱却したいと考え、特にイメージの観点から、ゼニスに目を向け、同社のエル・プリメロ・クロノグラフ・ムーブメントの改良版を採用した。

 どういうことかというと、ETAのような標準的なムーブメントのメーカーと協力するよりも、長い歴史を持つ時計メーカーであるゼニスと協力する方が、ロレックスのイメージ戦略にとって好都合だったのだ。

 さらに、スウォッチ・グループには多くの時計ブランドがあるため、ETAはムーブメントを突然販売停止にすることも可能だったが、ゼニスは小規模な会社であり、ロレックスとの協力は重要だった。エル・プリメロがオイスター・パーペチュアル・コスモグラフ・デイトナに採用された。

 こうしてロレックスは、研究を通じてクロノグラフの技術的ノウハウを習得した。初の自社製クロノグラフ・ムーブメントは2000年に設計された。

買った瞬間から値段が上がる?
高騰が止まらない中古ロレックス

 保守的な商品開発戦略が奏功して、ロレックスの時計は1990年代初頭からコレクターに求められる真に象徴的な製品となった。

 ロレックス時計のインフレを除いた実質価格は、1989年から2012年の間におよそ2倍になった。中古品の場合、その上昇幅はさらに大きく、世界中のコレクターの間でまさに競争の対象となっている。

 ロレックス・デイトナは、こうした象徴的な製品の1つである。1980年代半ばにはオークションで1000ドル前後の値がついたが、1990年代半ばには2万ドル、2020年には数十万ドルにまで上昇した。2017年10月には、アメリカの俳優ポール・ニューマンが所有していたデイトナが1780万ドルで落札された。

 これらの数字は多くのオブザーバーを魅了し、中にはコレクターを奨励する本まで出版している人もいる。ロレックスの時計に関する数多くの文献は、そのほとんどが1990年以降に書かれたものであるが、それはこの現象から生まれたものである。

オークションハウスの登場が
高級時計の価値を一変させた

 この歴史的なモデルをめぐる熱狂的な購入競争は、主にオークションハウス側の新しい戦略によって盛り上がった。