円安がさらに進めば、資源から食料まで海外に依存する日本の庶民の暮らしがさらに厳しくなることは言うまでもない。高市首相が巨額の公金を投入するという「物価高騰対策」など焼け石に水だ。

 ……という話をすると、高市首相の周囲にいる積極財政派のみなさんは「そんなものは一時的だ。日本のように自国通貨を発行している国はいくら赤字国債を出してもデフォルトしないのでじゃんじゃん減税すればいい」と、いわゆるMMT(現代貨幣理論)を持ち出してくるだろう。

 その願いは痛いほどわかる。が、MMTは世界の主流派の経済学者に否定されているし実践している国もない。もっと厳しいことを言ってしまうと、日本国内でいくら「減税の財源がないなんて話はザイム真理教による洗脳なのだ!」と喉を枯らしたところで、そのロジックは世界で通用しない。

 国際通貨基金(IMF)のシュエイリ・アジア太平洋局副局長も昨年10月、時事通信のインタビューを受けて、「極めて脆弱」な貧困層に対する対策は必要だが、それは消費減税ではないとして、そんなことよりも財政健全化計画を策定せよと提言している。

(時事通信社「日本、財政健全化へ「時間ある」 消費減税は回避を―IMF高官インタビュー」https://www.jiji.com/jc/article?k=2025102400650&g=eco&p=20251024at35S&rel=pv)

 ちなみに、日本は昔からこういう事実認識をめぐる「内外格差」が激しかった。

 例えば太平洋戦争時、日本国内では「日本軍は世界一強く、アメリカ人は個人主義で軟弱なので劣勢に立たされたらすぐに講和を求めてくる」という楽観的な見方とともに「これはアジア解放の聖戦だ」などと勇ましい言論が巷にあふれていた。

 しかし、アメリカや欧州を見てまわっていた軍の上層部や官僚、海外で暮らしていた邦人は日本の状況を客観的に見ていたので「かなりマズい」と頭を抱えていた。

 石油などの資源はもちろんのこと、兵力、工業力などアメリカと歴然とした差があって、どんなにシミュレーションをしても「日本必敗」という結果にしかならなかった。日本が掲げた「大義」にもほとんどの国は賛同しなかった。