日本のGDPは第5位に転落へ
財政の悪化は深刻化してしまうのか

 日本経済は、これまでの長期停滞から完全には脱却できていない。人口減少と少子高齢化もあり、社会全体としての活力を取り戻しているとは言い難い。名目賃金の伸びは物価の上昇に追い付いておらず、個人消費に勢いはない。日本のGDPは2026年、インドに追い抜かれ世界第5位に転落する見通しもある。

 また、主要先進国の中で日本の財政悪化は明らかだ。25年度末、国と地方を合わせた長期債務の残高は1330兆円(対GDP比211%)に達する見込み。一般会計に占める年金、医療など社会保障関係費の増加に加え、金利上昇で国債の元利金支払い(国債費)も増加している。

 世界情勢も激変している。米トランプ大統領は、法の秩序ではなく、力による支配を重視し始めた。日本は自力で安全保障体制を整備することが急務だ。それも、財政支出を増やす要因になる。

 本来、総選挙とは社会全体の活性化や経済成長を高める政策を、国民が吟味する機会であるはずだ。ところが、各党の公約を見る限り、実現可能性に疑問符が付くもの、単に聞き心地のいい言葉が躍っているものが多いように見受けられる。「人気取り=ポピュリズム選挙になっている」との批判もある。

 中でも注目されるのが、食料品を中心とする消費税の減税だ。食料品の消費税をゼロにすると、一時的に個人消費は増えるだろう。一方で、税収は年間4.8兆円ほど減少する。費用対効果を考えると、消費税率の引き下げは、必ずしも効率がいいとは言えない。

 しかも、何を財源にするかがあまり明確ではない。財政や社会保障制度の悪化を加速させる可能性のある消費税の減税は、“劇薬”だと懸念する経済の専門家は多い。

 財源として、政府が保有する資産を元手に新たにファンドを作り、その運用益を充当する考えもあるようだ。しかし実際には、多くの運用益はすでに一般会計に組み込まれている。それを、消費税率引き下げの財源とするのは無理があるだろう。

 今回、与野党とも消費税率引き下げを打ち出した。衆院選をきっかけに財政悪化が一段と深刻化する可能性は高い。