今、日本経済を強くするために
本当に必要な政策とは何か

 今、日本経済を強くするために本当に必要な政策とは何か。それは、潜在成長率の引き上げを実現する施策だろう。1月中旬の金利急騰は、財政再建が必要であることを示した。医療や年金関連の歳出の効率化にも迫られている。金融政策では、物価を安定させるために、状況に即した迅速で柔軟な政策運営が求められる。

 日本の潜在成長率を高めるには、制度や社会の仕組みを変える必要があるだろう。重要な先端分野の一つは、AI(人工知能)の半導体だ。トランプ米大統領が欧州への圧力を強める中、台湾有事の緊迫感も高まっている。それに伴い、半導体に関して台湾依存を引き下げるなどサプライチェーンの再構築を急ぐIT関連企業が増えるはずだ。

 特に、回路線幅が1桁ナノ(ナノは10億分の1)メートル台の先端チップは、事実上、世界が台湾に依存している。車載用の半導体でも、米中対立の影響でオランダ・ネクスペリアのチップ供給が止まった。

 ラピダスをはじめ、わが国の半導体関連企業に対する国際的な期待は上向き始めている。そうした変化を生かして、AIチップなどの競争力を上げるために官民で支援すべきだ。

 一例として、そうした先端分野への設備投資や研究開発を増やした企業の税負担を軽減することは、有効な政策になり得る。世界中で取り合いになっている半導体の専門家人材を確保するためにビザを発行する、技術者を育てる学び直し制度を強化するのも有効だろう。

 AI関連分野が成長するには、データセンターに多量の電力を必要とするため、電力供給量の引き上げも重要となる。再生可能エネルギーや原子力など発電源を組み合わせ、脱炭素とエネルギーコストの引き下げを図ることも重要だ。

 世界的に電力不足は深刻だ。可能な限り国内で電力の需要を満たす体制の構築は急務といえる。そうした改革が本格化すれば、在来分野から成長期待の高い分野へヒト・モノ・カネを再配分する動きは増えるだろう。

 政治とは、財源の制約がある中で多様な利害を調整して改革に取り組み、国が向かう方向を明確に示すことだろう。改革を主張する政治家は多いが、実行力が伴わなければ意味がない。日本経済は今、本質的に回復しないともう後がない。有権者は日本の将来像を真剣に考えることが求められている。

真壁昭夫・多摩大学特別招聘教授のプロフィール