日本と米国で決定的に違う
多重下請けという構造問題

 だから最近、日本のメディアがブルーカラー・ビリオネアを取り上げ始めて、「やっぱり!日本でも現場作業者が儲かる時代だ!」と思った。しかしながら筆者の実体験や、日本で今報じられている一部のブルーカラーの給料が上がり始めている話は、先述した米国での事情と微妙にズレている。ビリオネアを純粋に訳すと、資産10億ドル(1500億円強)以上の大金持ちを指す。

 米国におけるブルーカラー・ビリオネアとは、時代の波に乗った錬金術であり、ファンドという道具を使った事業売却によってもたらされた富だということは先述の通り。

 一方、日本では職人が独立してもひとり親方になるケースが多い。米国では起業→拡大→売却というダイナミックで持続可能なシステムが、ブルーカラーにも浸透しているところに凄みがあるのだ。

 日本の労働現場には、多重下請け構造がある。元請がいて、下請、孫請とピラミッド型の業務分配システムがある。東北の8万円だって労働者にダイレクトに支払われるものではない。最近は改正建設業法で労働者の処遇改善が図られているとはいえ、この強固なピラミッド構造を壊すほどではない。

 米国は元請とフラットな関係で契約することが多く、日本とは異なる。米国も日本も一部のブルーカラーの賃金は上昇傾向だが、米国のようなビリオネアが続出するかというと、構造問題として違う気がする。

AI時代のフィジカル再評価
手に職を付ける機運は確実

 とはいえAI時代でホワイトカラーの仕事が奪われていくのは、ほぼ間違いない。ビリオネアは別にしても、現場で体=フィジカルを使って仕事する価値はしばらく上がり続けるだろう。

 文章の作成、データ分析、簡単なプログラミングなどは機械が担える。ただし、電気技師や配管工をロボットが代替するのは当分、先の話だろう。手に職を付ける機運は確実に高まっている。

 AIに仕事を奪われたビジネスパーソンが、AIのデータセンターを建設するためにブルーカラー労働に従事する時代が到来するとは。これは皮肉なのだろうか、それとも当然の帰結なのだろうか。

米国の電気技師や配管工は年収1500万円強!?なぜブルーカラー・ビリオネアは日本で「生まれにくい」のか