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主に北極で独自の活動を重ねてきた、探検家の角幡唯介氏。過酷な冒険には体力が不可欠であり、若い頃の彼は人生の頂点は43歳だと思っていた。しかし本稿の執筆時48歳だった角幡氏は、意外なことに50代が楽しみなのだという。50代以降の人生を30代40代よりも充実させる捉え方を解説する。※本稿は、探検家の角幡唯介『43歳頂点論』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
生への執着が薄れ
死を恐れなくなった理由
死ぬのが昔ほど怖くなくなったという不思議な感覚もある。
若い頃の自己存在証明の時代は、死のリスクをおかしてでも生の証をのこしたいという気持ちが強かった。それは強烈な生への執着の裏返しだ。死のリスクを受け入れつつも、その反面、心底死にたくないと思っていたのである。なしとげたものが何もなかったせいで人生への期待が強すぎたのだ。
思い出すのは、30歳のときに春の立山連峰を登山中に雪崩で埋まり、自力で脱出できなくなったときのことだ。指一本動かすことができない状況のなかで、私はそのとき10分間ほど、窒息して意識がなくなるのを待っていた。
ほぼ100パーセント、死を免れない状況のなか、どのような心境でいたかといえば、ただただ無念のひと言である。1回目のツアンポー単独探検は終えていたけれど、こんなところで死ぬのか、まだ自分は何もなしとげていないというのに……という悔しさしかなかった。
だが、いまおなじ状況に陥ってもそんなふうには感じないと思う。







