「もう少し気の利いた会話ができれば良かった」「うまく話せなくて相手に気をつかわせたかもしれない」「いつも後になってから話せば良かった話題を思い出す」といった後悔を、経験した方がいると思います。

 この3つの機能を使う活動は、面白い話を見つけることに含まれていて、会話で脳を長持ちさせるためのタスクでもあります。これらの機能をバランス良く活用するよう、会話にルールを加えて設計したのが、認知機能の低下を遅らせる会話支援手法である共想法なのです。

「何を」「どう行うか」で、
将来の認知機能に差がつく

 修道女を対象にした研究(ナン・スタディ/Nun Study)では、シスターたちが出家の際に提出した作文の分析など、言語分野を研究したスーザン・ケンパー博士の興味深い研究があります。

書影『脳が長持ちする会話』(大武美保子、ウェッジ)『脳が長持ちする会話』(大武美保子、ウェッジ)

 その研究は、「歩きながら話す」という行為を高齢者層と若年層で比較したものでした。ケンパー博士によると、「歩き」ながら「話す」という2つのことを同時に行うことが、年齢とともにできなくなるので、高齢者は立ち止まって話し始めるそうです。そういう方に「無理にでも歩きながら話してください」と言うと、歩く速度が遅くなります。

 この研究結果からも、2つを同時に行うことは、年齢を経るにしたがって難しさがともなうことがわかります。

 高齢の方に、「ウォーキングクラブで山手線を一周して、どの駅の辺りが面白かったですか?」と聞くと、「いやいや、歩くのに必死で周りを見ていなかったからわかりません」という残念な答えが返ってくるのは、当然と言えば当然であり、正常であるとも言えるのです。

 人間の器官や機能は、適度に使えば発達し長持ちしますが、使わなければ退化・萎縮します。せっかく歩くのなら、何かを見てみようと計画したり、体験したことを誰かに話そうと意識したりすることが、認知機能を退化させないためのカギです。

 認知機能を保ち、底上げするには、「何をするか」だけでなく、「何を」「どう行うか」がとても重要になってくるのです