郁久美さんは「成秀が浮気しているのは確実です。相手も悠美だと思います。でもそれを知った方が良いのかどうかは分からないんです。知った後どうすれば良いのかも分かりません」。

 この言葉は、これまで他の依頼者からも何度か聞いてきました。

 裏切りを受け入れたくない気持ちと、もし不貞があったらその後どうすれば良いのか、変化を受け入れられるのか、対応ができるのか、みなさん自信がないんです。

探偵が経験から伝えた
3つのこと?

 私は、郁久美さんにこう伝えました。

「いきなり離婚するとか、しないとかを決めなくていいんです。まず決めていいのは、たった3つだけです」

・真実を知るかどうか
・一人で抱え込まないか
・誰かに相談するか

 探偵に相談することは、離婚を決意させることではありません。むしろ、決められないまま、一人で消耗し続ける状態こそが人の心を静かに壊していくのです。

 迷った末、郁久美さんは調査を選びました。

「決断のため」ではなく「状況や心の整理のため」の調査です。

 私はまず、行動が比較的読みやすい悠美さんから着手することにしました。

 若い社員で、生活リズムも一定だからです。

 こうしたケースでは、周辺から固めるのが基本です。

 一度の行動調査で悠美さんの住居が判明しました。成秀さんの会社から電車で2駅ほど。こぎれいな単身者向けのアパートでした。

 もともとは通勤に1時間以上かかる場所に住んでいたのですが、3カ月前に引っ越したようです。

 郁久美さんの協力の下、同僚から「通勤が大変そうだった」「最近引っ越したらしい」という証言を得ることができました。

 私はこの時点で、引っ越しが偶然ではないと感じていました。

 成秀さんの行動調査は、ゴルフの予定日に絞りました。

 早朝5時、成秀さんは自家用車で自宅を出ました。

 エンジン音、ウインカー、ブレーキの癖など、車の尾行では、こうした細部を知ることが重要になります。停車するのか、どこかに入るのか、誰かと合流するのかなど対象車両の行動を前もって予測するためです。この探偵ならではのテクニックは現場を重ねて培われて癖づいていくものです。それによって調査の成功率を上げる大きな要因となります。