成秀さんの車は、迷うことなく悠美さんのアパートへ向かいました。
彼女が乗り込むときの様子や荷物の積み込み方や2人の距離感から、会社の上司と部下以上の親密さを感じ取ることができました。
そのままゴルフ場へ到着し男女2人と合流し、4人でプレーを開始しました。午後1時過ぎにゴルフは終了。ここまでは「接待ゴルフ」と説明できる流れです。
しかし、食事後に2人の男女と別れた瞬間から空気が変わりました。
成秀さんと悠美さんは、自然な動きで車に乗り込み、迷うことなくラブホテルへ向かいました。
この瞬間、私は「黒だな」と確信しました。
午後7時過ぎ、2人はホテルを出て、8時過ぎに悠美さんのアパートに着きました。荷物を一緒に持って上がるだけかと思っていたら、そこから2時間近く出てきませんでした。
その後、成秀さんは何事もなかったかのように帰宅しました。
事実は、紛れもなく黒でした。
すべてを知ることが
必ずしも人を救うとは限らない
私は郁久美さんに電話で「不貞があった」という結論だけを伝えました。
しばらく沈黙があり、彼女は静かにこう言いました。
「調査、ありがとうございます。詳しいことまでは、知りたくありません」
私は答えました。
「承知しました。真実をどこまで知るかを決めるのも、依頼者さんの権利です。必要になった時点で、報告書はいつでもお渡しできます」
すべてを知ることが必ずしも人を救うとは限りません。
知りすぎることが、心を壊す場合もあるんです。
探偵は事実を突きつける人である前に、どこまで事実を扱うかを一緒に考える人であるべきだと、私は思っています。
郁久美さんは、すぐに離婚を選びませんでした。
「学生時代から支え合ってきた年月、築いてきた生活、今の経済的な安定、母の介護にかかる現実的な費用。それに、成秀の母とも、本当の親子みたいな関係なので。すぐに離婚を決めるとかは考えられません。でも、成秀の見えなかった行動と、小さな違和感から自分の気持ちがかき乱されてモヤモヤしていたものがはっきりして、ようやく気持ちが楽になりました」







