《ユーモラスな広告は注目を集め、消費を楽しませます。それにもかかわらず、ユーモアを試みることはリスキーです。なぜなら、消費者は失敗したユーモアの試みによって気分を害する可能性があるからです。
私たちは、ユーモアを試みることがリスキーであるもう1つの理由を提案します。ユーモラスな広告は、たとえ消費者がその広告を面白いと感じたとしても、ネガティブな感情を引き起こすことによって、ブランドに対する態度を傷つける可能性があるのです》(『When Does Humorous Marketing Hurt
Brands?』ケイレブ・ウォーレン、A・ピーター・マグロウ、2016年)
この論文が指摘するように、笑いは時として「不快感」や「軽蔑」と紙一重である。特に、誰かを傷つけるような「攻撃的な違反」や、生理的な嫌悪感を催すような「不潔な違反」を含んだユーモアは、たとえ爆笑を誘ったとしても、企業としての品格や信頼を損なう結果を招く。
ユーモアをマーケティングに活用するには、綱渡りのようなバランス感覚と、人間心理への深い洞察が必要とされるのである。
スズキの車種には元会長の「ダジャレの才能」が光る
さて、ここに一人の経営者がいる。日本が世界に誇る自動車メーカー、スズキの元会長、鈴木修である。
鈴木氏は、徹底した現場主義とコスト意識で知られる「カリスマ経営者」であるが、同時に、類まれなる「言葉の魔術師」でもあった。鈴木氏が放つ言葉は、常に飾らず、本質を突き、そして何よりもユーモアにあふれていた。
中でも特筆すべきは、鈴木氏が生み出した数々の車名に込められた、強烈なまでの「ダジャレ精神」である。
スズキの歴史を変えた1台、「アルト」。1979年に発売されたこの軽自動車は、当時としては破格の「47万円」という価格を打ち出し、業界に激震を走らせた。
この「アルト」という名前の由来をご存じだろうか。それは、「あると便利」という、あまりにも直球なダジャレから来ている。イタリア語で「秀でた」という意味もあるとされるが、鈴木氏の念頭にあったのは、「主婦の買い物に、あると便利」という日本語の響きであった。
難解な横文字や気取ったコンセプトを並べるのではなく、中学生でもわかる言葉で、その車の存在意義をズバリと表現する。これこそが、鈴木修の流儀であった。







