「売れているクルマはヘタに触らない」。これは自動車メーカーの常識だ。

 クルマが売れる理由はひとつではない。デザイン、乗り味、使い勝手、価格のバランス、そして何よりも「世の中の空気」。その空気が読めている間は、うかつに手を出さない方が良い。ヘタに触ると、せっかくの“良い空気”の流れが変わってしまう。ユーザーが離れる。販売店から文句が出る。社内が騒ぐ。そして我々外野が無責任に「前のほうがヨカッタ」と囃し立てる。だから人気車のモデルチェンジは慎重になる。ならざるを得ない。

 だがデリカミニは違う。バリバリに売れている。キャラクターの「デリ丸。」関連商品も飛ぶように売れている(先の東京オートサロンでは「デリ丸。」グッズの前に長蛇の列ができ、直後から転売ヤーによる高値販売合戦が始まったほどだ)。それなのに、わずか2年と5カ月でフルモデルチェンジを実施した。なぜか。なぜ売れているのに変えたのか。

 率直な疑問を責任者にぶつけてみよう。先代でもお話を伺った、三菱自動車・藤井さんのインタビューをお届けする。

三菱自動車工業 商品戦略本部 チーフ・プロダクト・スペシャリスト(Domestic Vehicle 藤井康輔さん三菱自動車工業 商品戦略本部 チーフ・プロダクト・スペシャリスト(Domestic Vehicle) 藤井康輔さん Photo by AD Takahashi

デリカは三菱自動車の屋台骨

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):どうもごぶさたです。2年半ぶりですね。早速ですがデリカミニ、売れ行きはどうですか?

三菱自動車工業 商品戦略本部 チーフ・プロダクト・スペシャリスト(Domestic Vehicle) 藤井康輔さん(以下、藤):良いです。とても良い。三菱自動車は年間でざっくり12万台ぐらいの国内販売台数があるのですが、そのうちデリカミニが4万台強、デリカD:5が2万台強。5割以上をデリカファミリーが支えていることになる。

 現場の空気としても、販売の方々の手応えとしても、「デリカがウチの屋台骨」という状態になっています。「デリカ」という名前に対して社内外の目線も集中しますし、逆に言うと“ここを外すわけにいかない”という緊張感も強いわけです。

F:すごいなぁ。国内で売れている三菱車のおよそ3台に1台がデリカミニ。道理で藤井さんがオラオラするわけだ。

藤:オラオラしてません!やめてください!

F:いや冗談です(笑)。デリカミニは中古も高いですよね。

藤:はい。残価率や中古の買取市場は、結局のところ「いまこのクルマを買う意味」が数字で見えてしまう世界です。デリカD:5はまさにそれで、ワンボックスミニバンというくくりの中でも、残価率の評価がかなり高いところにあるんです。現場の肌感としても、販売店からも、ユーザーさんからも、「乗って終わりじゃなくて、その先まで含めて安心できるクルマ」になっているのはとても大きいです。だからこそ、変える側としても、ちゃんと責任を背負わなきゃいけないというか、ここを外すとダメージが大きい、という緊張感が常にあります。