電子書籍の「試し読み」は珍しくない
実際に購入に結びつくケースも
もちろん中には試し読みに好意的な感想もあり、試し読み後にそちらの作品も購入したという人もいる。「おまけ」がついていただけで、損をしたわけではないのだから怒らなくてもいいじゃないか、という声もある。
ただ、今回の批判の声からは「体験を損なわれたくない」消費者心理が垣間見えることが興味深い。
読者たちの一部はコンテンツを消費するという意識ではなく、体験にお金を投じていると感じている。この意識の違いは、現代の消費者心理と、企業側のブランディングを考える上で重要なポイントとなりそうだ。
今回の試し読みについて、出版社側の意図もわかる。電子書籍の試し読みは最近ではごく当たり前に行われていて、キャンペーン期間になると、人気作品がかなりの分量が無料で読めることもある。「試し読み」をさせるのは、実際に売り上げにつながるのだろう。
一方、違和感を覚えた読者の気持ちもわかる。実は筆者もほぼ同様の体験をしたことがあるからだ。
筆者の場合は、無料の試し読みが数巻できる作品を読んでいたところ、無料の最後に別作品の1話目が添えられていたのだ。無料で読んでいるのだから文句を言う筋合いはないとはいえ、急に別作品が入ってきたことで、強制的に「味変」させられたような感覚を覚えた。
元から読んでいた作品も、途中で急に入ってきた作品もジャンルで言えば同じではあったのだが(いじめにあっていた主人公が復讐する、いわゆる『胸スカもの』だった)、作者も違えば絵柄も違うわけだから異物感は否めない。
今回問題になった『メダリスト』はフィギュアスケートでメダルを狙う少女の話で、試し読みでつけられた作品は『ディグイット』というバレーボールをテーマにした漫画だった。
どちらもスポーツものであるという共通点はある。似たジャンルのものを勧めた方が受け取ってもらいやすいであろうという、わかりやすいリコメンドである。







