愛しているからこそのブーイング
「没入感」を邪魔されたくない!

『メダリスト』は、今年からアニメの2期が始まっており、来年には映画公開が予定されている人気作品である。

 ストーリーは、スケートの才能はあるものの、その他のことが不器用で周囲に馴染めず、母親からの理解も得られていない小学生の女の子・いのりと、運や境遇に恵まれず才能を十分に開花させることができなかったコーチ・司が、二人三脚で切磋琢磨する王道のスポーツ漫画である。

 同年代の才能ある選手たちがしのぎを削るのはもちろんだが、フィギュアスケートという、他のスポーツに比べて金銭面の負担が大きいといった特殊な業界事情も散りばめられている。

 フィギュアスケートというスポーツ界でもやや特殊な世界で登場人物の成長を見守るファンたちにとって、その世界への没入感を邪魔されたくない気持ちが強かったのであろう。裏を返せば、作品への没入感が高くファンから愛されていたために、今回の試し読み付録にブーイングが発生した。

 ただ、このような反応は、試し読み付録がまだ一般に広く認知されていないゆえの違和感とも言える。今後、電子書籍でのこういった試みが当たり前となれば、消費者側も徐々に慣れて「これはまあ、こういうものだよね」と受け取るようになるのではないか。

 別作品の試し読み付きとそうでないバージョンが選べる選択制にすれば、むしろ試し読み付きの方が売れる可能性もある。

 予期せぬ「おまけ」が消費者にとってどのような体験となるのか。コンテンツ産業では、作品をどう届けるかだけでなく、「どこで終わらせるか」も含めた設計が、これまで以上に問われている。

 おトクに見える施策が、体験を壊していないか。一度立ち止まって考える必要がありそうだ。