「多くのコスプレイヤーが陥りがちなのは、洗練された完成品を見せなければと気負ってしまうこと。確かに完璧なコスチュームは素敵。でも、見ている人は、その人の個性や人格を知りたいんじゃないかと思う」

 彼女のコスチューム写真を見ると、今も昔も胸元が大きく開いた大胆なデザインのものが多い。

「10年前は私のインスタに写真を観に来るのは8割が男性だった。でも、最近は私のインスタのフォロワーのほとんどが女性。それは、ミシンを使って衣装を縫う製作過程を頻繁にコンテンツとして発信してきたから。自分でどんなファンを獲得したいかを考えて、意図的にやってきたこと」

 一時の流行ではなく、ずっと愛されるデザインの衣装や、検索エンジン上で上位に来やすい「エバーグリーン」コンテンツを作ることを心がける。100万人にバズることを考えるより、1000人のコアファンを大事にしているという。

「長年、本当の意味で応援して課金してくれるのはこの1000人。1人が月に5ドル課金してくれるとして、月に5000ドルの収入があればサステナブルな活動は可能」

ライバル候補に「成功の秘訣」を
惜しみなく伝授するのはなぜ?

 今、多くのコスプレイヤーが直面する問題は「課金してくれるファンとの交流の境界線をどう引くか」だ。

 会場から「セクハラギリギリの際どいコメントがファンから送られてきた時、どう対処すればいいのか?」という質問がヤヤ・ハンに飛んだ。

 すると彼女は「自分ならひとりで悩まず、コスプレ仲間のサポートグループを作って相談してみる。不安に思ったらそれをプラットフォーム上で全員にわかるように説明するか、その特定の個人に警告した上で、その個人のコメントを消すか、それとも無言でブロックして消すか、対処法はいろいろある」と伝えた上で「課金してくれている相手に対しても、倫理の境界線は遠慮せずきちんと引いていい」と答えた。

 高校3年時に親元を離れて、移民としてサバイバルしてきたヤヤ・ハンに「あなたが試行錯誤しながら必死につかんだ成功の秘訣をなぜ惜しげもなく後輩たちに教えるのか?彼らはライバルでは?」と聞いた。

「若い子たちがコスプレの世界で成功するのが自分にとって心から嬉しいことだから。自分はアジア系移民としてこの国でアメリカン・ドリームを掴むことができたし、それは誇りでもある。でも同時に若い後輩たちの成功も後押しして助けたい」

 ある男性の参加者はヤヤ・ハンに向かって「あなたのことは2007年頃にマイスペース上で初めて知った。あなたは『自分はコスプレ界の恐竜だ』とジョークめかして言うけど、あなたが恐竜なら僕たちも恐竜だよ。僕たちにとってあなたはずっと輝いている憧れのスターなんだ」と言い、会場内に拍手が起こった。

 サイン会場の長蛇の列に並んで、ヤヤ・ハンから手書きのサインをもらったファンのライラはこう言った。

「2013年頃にテレビ番組で彼女を見て、子供心にこの人格好いいなと思った。今回、自分は初めてアニメ・イベントに来たんだけど、絶対に彼女のサインだけはもらおうと決めていた。コスプレ衣装をアートにまで高め、それをキャリアにする道を彼女が皆に示したと思う。きっと陰には人に見せないたくさんの努力があったはず」

 ヤヤ・ハンは、生涯現役コスプレイヤーという前人未踏のキャリアをいま、ばく進中だ。

フォロワー300万人いても「SNSに頼らない」….超人気コスプレイヤーが貫く独自の稼ぎ方アニメLAでの講演のあとに観客たちとおしゃべり
フォロワー300万人いても「SNSに頼らない」….超人気コスプレイヤーが貫く独自の稼ぎ方持参した写真にヤヤ・ハンからサインをもらったファンのライラさん