あまりの暴言に、刑務官が一瞬、筆記の手を止めました。

「和樹君の将来が楽しみですね。お陰様でたっぷり時間があったから、いろいろ仕込んでおいたよ」

 私は暴言に耐えられず、面会終了時間を前に面会室を飛び出してしまいました。

沢村の悪影響を受けた息子が
わいせつ行為に手を染めてしまった

 息子が上京して半年近くが過ぎた頃、私は夏休みに息子が帰ってくる日を待ち遠しく感じていました。息子は東京の生活が楽しいようで、電話をしても出てはくれず、LINEにそっけない返答が来るだけなのです。

 今年は合格祝いを兼ねて、家族でオーストラリアに旅行に行く計画を立てていました。そんなある日、突然、弁護士を名乗る人物から電話が来ました。和樹が逮捕されて、警察署にいるというのです。

 私は今流行りの詐欺電話に違いないと思いました。弁護士の名前を検索すると、確かに法律事務所のホームページがヒットしました。私は警察署に電話をして確かめると、息子は本当に逮捕されていたのです。容疑は女性へのわいせつ行為でした……。

「たっぷり時間があったから、いろいろ仕込んでおいたよ」

 沢村が最後に放った言葉が思い出されました。

 私と夫はすぐに上京し、都内の警察署に向かいました。息子の犯罪は、1件では済まなかったのです。

「東大生は警察のコネを使えるから捕まらないとか、貧乏な家の女は金でなんとかなるとか……、一体どういう教育されてるんですかね」

 担当刑事は呆れ顔で私たちを見ていました。まだ東京に来て半年も経っていないのに、私は沢村の影響に違いないと思いました。

 息子は声をかけた女の子をホテルや自宅に連れ込み、性行為を強要していたというのです。女性が嫌がると、「俺は警察にコネがあるから捕まらない」などと言って脅迫し、無理やり行為に及んでいたとのことです。

 被害届が出されたのはふたりですが、被害者は他にもいると……。被害者には同じ大学の学生もいました。

 事情聴取の後、私たちは息子との面会を許可されました。数ヵ月ぶりに見る息子は、髪も金髪でまるで別人になっていたのです。