「もし病気になったら……」「もしも仕事がなくなったら……」など、実際にはまだ起こっていない不幸を先回りして想像して不安になることを広い意味で「予期不安」と言うことがありますが、日本人はこうした予期不安が世界的にみて強い傾向にあります。先のことを心配しすぎて、「今」を楽しむことができないのです。

センセーショナルな報道が
視聴者の不安を駆り立てる

 私は、多くの日本人が「老後資金が足りるだろうか」と不安を抱え、必要以上に節約しているのは、メディアの影響も大きいのではないかと考えています。

 とくにテレビのワイドショーは視聴率を稼ぐため、視聴者の不安を煽る情報を中心に取り扱います。限られた時間でインパクトのあるニュースを伝えようとするので、どうしても悲観的でセンセーショナルな内容が優先されがちです。

 そのため、老後の生活についても「老後破産が増えている!」といった衝撃的なニュースばかりを目にすると、それがあたかも当たり前のことのように感じられて、「自分もそうなるかもしれない」と不安になってしまう人も多いのかもしれません。

 もちろん、誰もがお金に困らないとは言いませんが、そういうときのために、日本には年金や社会保障制度があります。これまでずっと税金を払い続けてきたのですから、万が一足りなくなったら生活保護を受けたっていいのではないかと思うのです。

 ところが、日本では生活保護の利用率が極めて低く、生活保護費の対GDP比率は、OECD諸国のなかで最下位クラスです。

 生活に困窮していても、制度を利用しない人が多いからです。

 その根底には「生活保護を受給するなんて恥ずかしい」と世間体を気にする心理や、「生活保護をもらうのは申し訳ないこと」という罪悪感が強く根付いているからではないでしょうか。テレビが「不正受給が多い」と報じた結果、受給者バッシングが起きる国ですから、そういう空気を感じてしまうのも仕方のないことかもしれません。