燃え尽き症候群を乗り越えるには
野口聡一(宇宙飛行士)
私は宇宙から還ってくるたびに、いわゆる燃え尽き症候群と向き合ってきました。宇宙飛行士はオリンピックのメダリストなんかと一緒で、本人自身も最高の結果を出そうと本番に向かって努力しますし、周りの注目度も非常に高く、成功した時には国内のみならず、世界中から称賛を浴びる。
ところが、ほとぼりが冷めれば「普通の人」になり、次に何をするかというビジョンや目標の再設定に苦しむ人が多い。それを「燃え尽き」と表現しているわけですね。
燃え尽きること自体は全然悪いことだと思っていなくて、むしろ贅沢な悩みです。自分の意志と努力と周りのサポートがあって高みに到達することができたわけで、そこに人生のすべてを懸けて燃焼し尽くせたことは、本当に幸運だと思います。
私の場合、1回目と2回目の宇宙飛行はほとんど間がありませんでした。1回目が終わって、ひと息つこうかと思った時にもう次のミッションが走り始めてしまったので、比較的早く切り替えられて没頭できたんですね。
ただ、2回目の宇宙飛行から帰還した際には、宇宙ステーションの滞在日数とか2種類の宇宙船に乗ったとか、その時点であらゆる日本人の宇宙飛行士記録を塗り替えていました。報道番組のキャスターを務めたり執筆活動に取り組んだり、いろいろな仕事に従事しましたが、次なる人生の目標を見出せず、長く暗いトンネルの中を彷徨うような日々でした。
与えられた目標を達成しても
自己実現したことにはならない
そのトンネルを抜け出せたポイントは、自分がやりたいことや自分の価値を他人に決めさせないということですね。少し難しい言い方をすると、社会的な称賛を以て自己満足としない。例えば、何かの記録で1位になるといったことを目標にしてしまうと、それを達成した途端に向かう場所がなくなってしまう。しかし、自分としてはまだまだ高みを目指したいというものが心の内にあれば、そこでお終いにはならないんですね。







