退職代行サービスは、就職、転職市場の活性化を背景に「辞めたいけど顔を合わせたくない」という若者の心理を巧みに捉え、SNSも駆使して急成長してきた。

 パーソル総合研究所が2025年8~9月に実施した退職代行サービスに関する調査では、利用者の半数を20~30代が占めた。理由は「すぐに退職したかった」が42.3%と最多で、「上司への恐怖心」が28.8%で続いた。また、利用後に金銭トラブルが生じたケースも23.1%に上ったという。

 このデータを見る限り、退職代行の存在意義は、現代社会においては小さくない。また、過酷な労働環境に苦しみ、退職したくても言い出せず、代行を必要とする人々がいるのも事実だろう。弱者に寄り添い、救済するという「社会正義」を「正しい手段」で実現できれば、退職代行サービスの存在意義は大きいといえる。

 だが、弱者に寄り添い、救済するという本来は正しいはずの「社会正義」を「誤った手段」で実現することは認められないし、早晩、退場を余儀なくされる危うさを抱えることになる。

 モームリの法令違反も、もしかしたら当初は「高い志」や「使命感」が突き動かしたことだったのかもしれない。それが、会社の利益成長に目的がすり替わり、隠蔽を重ねたであろうことは想像に難くない。その結果、「ばれなければよい」という開き直りの姿勢となったことは、極めて悪質だ。

 そもそも、報酬目的の弁護士紹介は、弁護士が依頼者より紹介者の意向を偏重する恐れがある。また、非弁行為が禁じられているのは、法知識が不十分な者が間に入ることで依頼者が本来の権利を主張できなくなり、不利益を被るからに他ならない。

 法の趣旨を逸脱して依頼者に不利益を生じさせる可能性を認識しながら、それを隠し、依頼者をリスクにさらすビジネス。そんな方法で稼ぎ続けてよいはずがない。ビジネスとして間違っているし、その結末は明らかだ。

 さらに、元従業員は「違法行為の疑いがあることはわかっていた。苦しみながら働いていた」と吐露している。そもそも最初から無理筋のビジネススキームに、従業員をも巻き込んだ罪もまた大きい。