「リーダーの年齢」に対する評価、政治と経済で全然違う

 直近のキヤノンの業績を見ていただきたい。

 御手洗が90歳を迎えた2025年12月期の通期決算は、売上高は前年比2.5%増の4兆6247億円となり、2期連続で過去最高を更新している。特筆すべきは利益面だ。本業のもうけを示す営業利益は前年比62.8%増の4554億円、最終的な純利益に至っては前年比107.5%増となる3321億円を叩き出した。

 快進撃ならぬ、「怪」進撃である。

 この数字は「老人がなんとなく座っている会社」が出せるものではない。主力であるカメラ事業では、ミラーレスカメラの新製品が市場を席巻した。さらに、かつて買収し育成してきたメディカル(医療機器)事業もしっかりと収益の柱に育っている。

 正直、若い経営者の方が、新しい技術に詳しく、体力もあるのではないか。そう考えるのは自然だ。

 しかし、企業のトップ、特に最高経営責任者(CEO)に求められる役割は、現場で走り回ることではない。複雑な利害関係を調整し、法律や規制を遵守し、組織全体が間違った方向に進まないように監視することだ。ここには、若さゆえの勢いよりも、経験に裏打ちされた「知恵」と「信頼」が必要になる。

 この点について、非常に興味深い実証研究がある。企業のトップの報酬と年齢の関係を分析した論文だ。

《年配のCEOは、若いCEOと比較して、より信頼でき、効率的で、信頼に足る人物であると認識されているということだ(特に、2002年のサーベンス・オクスリー法『SOX法』※によって要求される厳しい規制要件を満たすという点において)。この主張と一致するように、SOX法導入後、米国企業のCEOの報酬総額は、若いCEOと比較して年配のCEOの方が大幅に増加していることがわかった》(論文『Dynamics of CEO compensation: Old is gold』2015年より)
※企業の不正行為対策として制定された内部統制および監査に関する米国の法律