写真はイメージです Photo:PIXTA
小学生時代に寿司店で受けた扱いを、筆者はいまだ鮮明に覚えているという。鮨屋のカウンターは味覚だけでなく、礼儀や立ち居振る舞いなど己が試される舞台だ。鮨にうるさいグルメたちの著書づくりに携わるなかで、自身もどっぷりと鮨に魅せられた編集者・大木淳夫氏が、とっておきの店を教える。※本稿は、「東京の最高のレストラン」編集長の大木淳夫『50歳からの美食入門』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。
小学生時代に鮨屋で洗礼を受けた
カウンターは人間修業の場である
小学校低学年の頃、築地の鮨屋で悲しい目に遭いました。母がおそらく奮発して兄と私を連れて行ってくれたんですね。いわゆる町寿司だったと記憶しています。ところが大好きだった海老が入荷しておらず、私はものすごく不機嫌に。
その後、「坊ちゃん、何が食べたい?」と優しく聞かれたので顔を上げたのですが、親方が話しかけたのは兄にだけでした。私は完全に無視されたのです。甘えん坊のクソガキと思われたんでしょうね。当時は文句を言えば大人はなだめてくれると思っていたので、衝撃でした。今思えば、大変有難い経験でしたが。
鮨屋というのは、客にとっても人間修業の場だったと思います。いわゆる“おまかせ”スタイルが主流になったのは1990年代ですが、とはいえ、まだまだお好みの店も多くありました。そして親方はイメージとして怖い。ですから、若造がカウンターに座るのはとても勇気のいることでした。自身のオーダー能力、礼儀作法、コミュニケーション力、そのすべてが試される場だったからです。







