「ユータヌキさんは才能があるから、一緒にやりたいなあと思っていました!」と。

 え?

「いやいやいやいや、社交辞令でしょ」と思いつつも、認識してもらえていたことに心臓をバクバクさせながら何度かメッセージをやりとりさせてもらうことに。

 その後Zoomで何度か作品を見てもらい、アドバイスや感想をもらって「じゃあまた続きができたら連絡してね」と言ってもらえたのをまた鵜呑みにして、連絡してまたZoomで話すのを繰り返していくうちに「所属する?」と誘っていただき、スルッと所属させてもらうことになりました。

 コロナで仕事をほとんど失って、これからどうしようと思いながら、一念発起してはじめてみた創作漫画がキッカケでエージェントに所属できるなんて。自分の運の良さに驚きながらも、少しホッとしたのを覚えています。

編集者や同業者とのやりとりに
心をすり減らす毎日が待っていた

 しかし、そんな喜びも束の間でした。

 所属先のエージェントは、編集者や他の所属作家と話す時間を大切にしていて、その場では活動の中での気づきを共有して、議論して深めていくことが多く、必死に「ついていかないと」と思って参加していたのですが、みんなが話してることを理解できないという場面がよくありました。

 とくに壁にぶつかったのは「漫画は“出来事”じゃなくて、“心の動き”を描く」という話でした。

 それまでずっと誰に教えてもらうこともなく、感覚だけで漫画を描いてきたぼくにとっては、なんで心の動きを描くのかが理解できなかったんです。

 出来事だっていいんじゃないの?今まで読んできた漫画をそんなふうに見たこともなければ、そんなことを意識して描いたこともなくて、度々「また出来事を描いてるよ」と指摘をもらっては、なにがどうしてできてないのかもわからず。焦りと困惑ばかりの毎日でした。

 どういうことなのか、聞いて細かく教えてもらえばよかったものを、当時はついていくことに必死なのと、みんなはわかったように話していたこともあって、そんなこと聞くのは水を差すようで申し訳ないという思いと、「そんなこともわからないのか」と思われてしまうんじゃないかという不安な気持ちで、その場その場をわかったフリをしてやり過ごしてしまっていました。