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*本記事はきんざいOnlineからの転載です。
財務の透明性が取引慣行を決定
筆者は、監査制度の普及度合いに起因する財務諸表の透明性が、金融機関の取引慣行を左右していると考える。財務諸表に対する監査制度は英国で誕生し、コモンローの地域と北欧で先行して発展・普及した。
監査制度は、外部から資金調達を行う際に財務諸表の信頼性を高める役割を担っている。監査制度が普及している地域では、銀行融資においても外部監査を求めるケースが多い。例えば、米国の融資契約では約半数に監査条項が含まれている。
一方、大陸法の地域では、財務諸表は納税手段としての性格が強い。このため税理士の役割が大きい一方、監査は相対的に普及していない。
大企業に比べ、中小企業は情報の非対称性が大きい。財務諸表の透明性が低い大陸法の地域では、銀行は情報の非対称性に対処するため、時間をかけて取引先の情報を蓄積する必要がある。リスク分散のため1行取引を避け、複数行取引を好むインセンティブが生じる。しかし、監査制度が普及しているコモンローの地域では、銀行が入手する財務諸表の信頼性が高いため、与信リスクを他行と分かち合う必要性は低い。
さらに、財務諸表の信頼性が高い場合、借り手企業は取引銀行を変更しやすい。借り手企業が1行取引に抱く最大の懸念は、融資取引が独占されることで不利な条件を強いられる「ホールドアップ問題」である。大陸法の地域では、借り手企業側も複数行との取引を志向し、取引条件を競わせることでホールドアップ問題を回避しようとする。しかし、財務諸表の透明性が高いコモンローの地域では、新規の銀行とでも円滑に取引を開始しやすいため、ホールドアップ問題が回避されやすい。







