手のひらで溶ける金属ガリウム、米が増産で中国に対抗高麗亜鉛が取得するテネシー州クラークスビルの工場。亜鉛浸出プロセスでの再利用に向けてマンガンを回収するセル洗浄オペレーター(2023年)
PHOTO: WILLIAM DESHAZER FOR WSJ

 ガリウムは銀色の金属だが、融点が低く、手のひらに置くと溶けてしまうという特異な性質を持つ。

 元素周期表に長く名を連ね、 軍事システム や自動運転車、ノートパソコンの急速充電器などに使用されているが、注目されることは少なかった。そして、世界に供給されるガリウムのほぼ全てが中国産だ。

 潤沢な資金を持つ投資家、つまり米政府が、この状況を変えようとしている。米国内外の工場に数億ドルを投じ、独自のガリウム供給網を構築することで、中国からの輸入依存を減らそうとしているのだ。

 トランプ政権が目標に掲げるプロジェクトの一つが、ウエスタンオーストラリア州のワガーアップでのものだ。米アルミニウム大手 アルコア は1980年代からそこで精製所を運営しており、ボーキサイトを処理してアルミナを製造している。ボーキサイトには微量のガリウムも含まれるため、アルコアはそれを抽出する工場を建設する予定だ。

 米政府はこの取り組みに資金を提供する計画で、オーストラリアと日本も参加する。アルコアによると、各国政府はその見返りとして、この工場で生産されるガリウムの一部を受け取る。同工場は最終的に年間約100トンのガリウムを生産する見込みで、これは世界のガリウム需要の10%に相当する規模だという。ガリウムの2024年の世界生産量は760トンだった。

 アルコアのウィリアム・オプリンガー最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「当社は長年、自社の処理工程においてガリウムを抽出できることを十分認識していた」と語った。「世界が今よりも大幅に多くのガリウムを必要とし、かつ採算が取れるのであれば、他の精製所でも生産を行うことは可能だ」

 ガリウム増産への動きは、防衛・自動車・ハイテク産業向けにレアアース(希土類)や重要鉱物を確保しようとするトランプ政権の取り組みの一環だ。例えば米国は、リチウムやコバルト、ニッケルといった製品の 戦略的備蓄 を支援するために数十億ドルを投じている。