積極財政は潜在成長率引き上げには寄与せず
日本が抱える「供給制約」緩和の効果期待薄
日本の潜在成長率が低い原因としては、労働生産性の伸び悩みや技術革新の停滞、産業の新陳代謝の欠如、資本蓄積の遅れなどが挙げられる。
これらを改善するには、生成AIの普及や産業構造の変革、人的資本の拡充などに取り組む必要がある。また、高齢者や女性の就労拡大、移民の受け入れなども労働力不足の解消につながる。
ところで、高市トレードが起きているのは、高市政権が積極財政を展開するからだと説明されている。確かに積極財政政策は、需要を増大させる効果は持つ。しかし、上記のような供給制約を緩和する効果はほとんど(あるいは全く)ない。
供給制約が続く中で需要を拡大すれば、インフレ圧力を高め、物価高騰がさらに深刻化する危険がある。
なお、政府の経済見通しでは、消費者物価指数は総合ベースで25年度に2.6%上昇、26年度に1.9%上昇と予測されている。食料価格の上昇が一巡し、ガソリン税の旧暫定税率の廃止などもエネルギー価格を抑えるからだとされている。
高市トレードは今後も続くのだろうか?
株価の上昇は、積極財政によって日本の成長率が引き上げられるという期待に基づくものだが、この期待は漠然としたものだ。具体的な裏づけがあるわけではない。
例えば高市政権は、「危機管理投資・成長投資」で、ITなどの戦略重点分野への投資を行うとしているが、これによって経済成長が実現する保証はない。むしろそのような投資が将来、重荷となる危険も決して否定できない。
長期金利上昇は財政破綻の警告
米国からの積極財政への“制約”あり得る
他方で長期金利が上昇している。その原因は、将来の企業利益率が上昇するという期待ではなく、将来の財政事情がさらに悪化するという予測だ。金利上昇は、この危険に対してマーケットが要求しているリスクプレミアムが増大していることの結果だ。
日本の財政事情が急速に改善する見通しはほとんどないので、金利上昇は今後も続く可能性がある。国債価格の暴落といった事態も考えられなくはない。
最近では、日本の財政破綻懸念は日本だけでなく、世界経済の観点からも警戒され始めている。
1月20日には、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に登壇したアメリカのベッセント財務長官が、日本の新発10年物国債利回りが直近の2日間で大幅な上昇を記録したと強調し、「アメリカの金利高騰について日本からの波及効果を分離して考えることは非常に難しい」と語り、日本の金利上昇が海外に波及しているという可能性が警戒された。
そして、長官は「日本の経済政策当局が市場を落ち着かせる発言を始めることは間違いない」と、沈静化に期待を示した。
いまの状況が続けば、アメリカなどから日本の財政運営に対する強い制約が加わるといった事態もあり得る。
こうしたことを考えれば、高市トレードが継続するとは考えにくい。







