アメリカで進む「創造的破壊」
潜在成長率高めるAIなどの新陳代謝

 一方で、アメリカ国内を見ると、いまAIを中心として大きな変化が起きている。それを象徴するのが、アンソロピックという新興企業だ。同社が開発した新しい生成AIは、さまざまな業務を自動化し、企業の実務に革命的な変化をもたらしつつある。

 同社の売上額はそれを反映して、25年末時点で90億ドル(約1兆4000億円)に達し、前年比で9倍に増加した。未公開企業であるが、26年2月の巨額資金調達後の企業価値は3800億ドルと公表されている。これは、トヨタ自動車の時価総額(26年2月中旬で3164億ドル)を超える。

 このようにアメリカ経済は、いまAIを軸として大きく変わろうとしている。潜在成長率も直近の議会予算局の推計では1.8%と日本をはるかに上回っている。

 ただし、全ての企業の株価が上昇しているわけではない。実際には、ついこの間まで成長産業と考えられていたSaaS提供企業の株価が下落している(注1)。これまでSaaS企業が提供していたサービスが生成AIに代替されてしまうからだ。

 これは「SaaSの死」と呼ばれる現象だ。古いものが退場し、新しいものがそれに取って代わる。こうして経済が急速に変わっていく。これはシュンペーターが言った「創造的破壊」そのものと言えるような状況だ。

 翻って日本はどうか? 政府はAI基本計画を策定し、AI分野での遅れを取り戻そうと必死だ。しかし現実には、いまだに本格的な日本発AIは登場しない。日米経済の実態や株価をけん引していく成長力に大きな差があることは、疑いようもない。

(注1)インターネット経由でベンダーシステムにアクセスし、機能を利用するクラウドサービス。例えば、米セールスフォースの顧客情報管理ソフトなど。