去年の秋口に入院し、クリスマスも年末年始も病院で、食事をとれないから季節感もまったくなく、気がつけば冬も終わりに近づき早春間近。寒い寒いと言いながらも、風を入れて外の香りを楽しみ、深呼吸をしていた。
素晴らしい夕焼けを
ふたりで手を繋いで見つめた
28年暮らしたこのマンションは、二人暮らしには少し贅沢なほど広い。西側に広いルーフバルコニーがあり、5階から開けた風景が見える。夕方になると西日が入って眩しいほどだ。年に数回、大パノラマのような夕焼けが楽しめる日があり、ここで夜空を見上げて星や満月を観察しながらビールを飲むのは最高に気持ちがよくて、お互いに大のお気に入りだった。
彼が自宅で療養しているあいだに、一度だけ、まるでご褒美のように素晴らしい夕焼けの日があった。何もかもが美しかった。風の流れさえ見えるようだ。少し背を起こしたベッドにふたりで座り、手を繋いで、静かな音楽が流れるなか、空じゅうを真っ赤に染めた夕焼けが暗くなるまで、ずっと見つめていた。
私は泣けて泣けて仕方なかったのに、保雄は私の頭を撫でながら、「泣かなくていいじゃん、こんなにきれいなのに」とニコニコしていた。
彼にとってこれは、人生の最後にあらゆるものが愛おしく感じられるという「末期の眼」の時だったのかもしれない。その時に撮った自撮りのツーショットが最後の写真となった。
死別を間近にして気づいた
自然の美しさや些細な幸せ
保雄が少し元気のある日、車椅子に乗せてこのバルコニーに出てみようと思い、訪問介護のヘルパーに手助けを頼んだことがある。
だが、来てくれた若い男性ヘルパーに「これは身体介護ではないのでできない」と断られたのには驚いてしまった。点数で決められている「介護」の範囲は厳しく制限されているんです、と申し訳なさそうにしている。
「ケアマネさんに相談してもらえますか」と言うので、その場で高梨さんに電話した。するとヘルパーと電話を代わるように言われ、彼と少し話をしたあとにもう一度私と代わり、「大丈夫ですよ、サービスの変更をしましょう」と電話を切った。







