女性ひとりでの在宅介護を可能にした、訪問看護師の知恵写真はイメージです Photo:PIXTA

書評家の東えりかさんの夫・保雄さんは、原発不明がんという希少がんを患った。治療は困難を極め、やがて治療中止を告げられる。病院での緩和ケアも選べたが、夫が望んだのは「自宅に帰る」ことだった。しかし、在宅介護を担うのは女性ひとり。体位を変えるだけでもたいへんな苦労だ。そんな東さんを支えたのは、訪問看護師たちの尽力とそこで教わった介護の知恵だった。※本稿は、東えりか『見えない死神 原発不明がん、百六十日の記録』(集英社)の一部を抜粋・編集したものです。

原発不明がんに冒された夫が
4カ月と20日ぶりに帰宅

 緩和ケアへ移行すると宣告されてから8日後の2月28日火曜日。退院の日を迎えた。ありがたいことに抜けるような青空だ。この日までに介護ベッドなど、在宅診療・介護に必要なものは全部自宅に揃った。すでに介護認定は要介護度5に決定済みなので、さらに足りないものはすぐに手配できると高梨さん(編集部注/ケアマネージャー)から聞いていた。すべてを確認して、私は家を出た。

 保雄が4カ月と20日ぶりに帰宅する。

 先が無いと告げられて絶望しているはずなのに、なぜか嬉しい。ここまでこぎつけたことが信じられないくらいだ。この数日ほとんど寝ていないので、精神的にハイな状態になっていたのかもしれない。