Photo by T.H.
松本白鸚が
わざわざ送ってくれた帰り道
――お忙しい中で、そこまでされるのはなぜですか?
北大路 私は学生時代から撮影で忙しくて、学校を休みがちでした。早退も多かった。そんな時、同級生たちが「ノート貸してやるよ」と言って助けてくれたり、中には私の分のノートを書いてくれていた友人もいました。
同級生の松本白鸚さんもそうでした。彼も私と同じように忙しかったはずですが、これから歌舞伎の舞台があるというのに、私が行く場所までわざわざ車で送ってくれたこともありました。
自分のことだって大変なのに、友のために時間を割いてくれる。そういう優しさに支えられて、私は学校に通うことができました。彼らがいなかったら、私は卒業できていなかったかもしれない。その感謝はずっと忘れません。
それにどんなに時間がたっても、会えば一瞬であの頃に戻れる。そういう友人がいてくれるというのは、人生の張り合いになります。
「三屋清左衛門残日録」のテーマもそこにあります。清左衛門は隠居しましたが、社会との関わりを断ったわけではない。むしろ、しがらみがなくなった分、より深く人と心を通わせることができるようになっている。
長く生きているとどうしても自分でやってきたという感覚が強くなってしまうこともありますが、多くの人のおかげで自分という存在が成り立っていると、私は思います。
私も80代になりましたが、今こうして働ける喜び、新しい人と出会える喜びを日々感じています。若い方との出会いもあれば、伊東さんや藤岡さんのように何十年にもわたるご縁もある。その一つひとつが、私の人生を豊かにしてくれています。
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相手を敬い、感謝し、利他愛を持って接する。北大路欣也さんの姿勢は、撮影現場の共演者に対しても、学生時代の旧友に対しても変わることがない。
年を重ねることは、孤独になることではない。むしろ、積み重ねてきた「縁」の深さに気づき、感謝する機会が増えることなのだ。「友達がいない」と嘆く前に、まずは今ある縁、かつて受けた恩に感謝してみる。そこからまた、新しい関係が始まっていくのではないだろうか。
北大路さんの言葉は、人間関係に悩む現代人の心に、温かな灯をともしてくれる。
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