20世紀後半以降、南極の氷床コア(氷床の柱)の分析などによって、過去数十万年の地球の気温が詳しく判明しました。その気温の変化の様子が、彼の理論でうまく説明できることから、氷期と間氷期のサイクルを説明する有力な理論とみなされています。
ただし、地球軌道要因による日射量の変動だけでは地球規模の気象変化は起きないという意見もあります。そこで日射量の変動に加えて、大気中の二酸化炭素濃度の変動が正のフィードバックをもたらす(互いの変化を増幅させ合う)といった考えも提案されています。
IPCCの2007年の見解も、ミランコビッチ・サイクル説に基づいています。41万年前に2万8000年も続いたMIS11という間氷期がありました。このMIS11と、現在の間氷期であるMIS1とは、ミランコビッチ・サイクル説による日射量の変化が似ているので、現在の間氷期はまだ当分続くだろう、という主張です。
しかし、別の研究者によると、現在のMIS1はMIS11の終わり頃の様子に近い、つまり現在は氷期の入り口である、と解釈できるそうです。
『眠れなくなる未来の宇宙のはなし』(佐藤勝彦、宝島社)
また、MIS1はむしろ78万年前の間氷期であるMIS19に近いという新説が、2010年に発表されました。離心率の変化に、約10万年周期だけでなく、約40万年周期のものもあることを考慮すると、こうした見方ができるそうです。
この場合、今の二酸化炭素濃度なら氷期にならないのですが、産業革命以前の濃度まで二酸化炭素を減らすと、あと1500年以内に氷期が到来するといいます。つまり、氷期が早く来るのを避けるためには、温暖化ガス排出の削減を行わないほうがむしろ良いことになります。
このように、以前は専門家の間でも次の氷期の到来時期について意見が分かれていました。しかし気候変動に関する最新の知見によると、これまでの人間活動によって現在の大気中の温室効果ガス濃度が非常に高くなっていて、そのために「氷期の始まり」が自然の周期よりも遅れている、と考えられています。「氷期の始まり」は5~10万年程度遅れるという予測もあります。ですから、今後数十年から100年の期間で私たちが考えるべきことは、人為的な温暖化やその影響への対策だといえます。







