しかし、ビジネスの世界では、失敗した人に対する処罰や解雇は珍しくありません。失敗が「脱落」につながるような環境が作られた結果、人々は不安になり、リスクを取ることを恐れるようになります。

 でももし、失敗を将来の成功への貢献とみなすようなモデルが存在したら、どうでしょうか。それは、特に成功だけが価値基準とされている管理職層において、根本的な変化をもたらすでしょう。彼らは成功しなければ、単に交代させられてしまう。しかし、これは非常に欠陥のあるアプローチだと私は思います。

堅苦しい日本の学校では
子どもの自主性が育たない

――教育制度の改革も必要だと感じます。日本の学校では、批判されたり叱られたりすることを恐れて、子どもたちが発言をためらう場面がとても多いですよね。

出口:その通りですね。

――保育園に通う私の子どもは、人前で話すことをとても恥ずかしがります。子どもが間違ったことを言ったときには「よく考えたね」と褒めているのに、なぜ間違えることを恐れるようになったのかがわからないんです。

出口:それには、日本人特有の表情の文化が関係しているかもしれません。大勢の前に立つと、見ている人たちの表情が話し手に強い影響を与えることがあります。聴衆の顔が緊張していたり、深刻だったり、あるいは厳しかったりすると、それだけで威圧感を生んでしまう。

 特に子どもは、そうした空気にとても敏感です。仲間や大人、教師、そして学校全体がつくり出す雰囲気に大きな影響を受けているのではないでしょうか。もしその場の空気が厳格で、温かみや寛容さに欠けるものであれば、前に出た子どもはどうしても萎縮してしまうでしょう。

 だからこそ、もっとリラックスできる環境をつくることが大事だと思います。堅苦しさのない、開かれた、柔軟な空間ですね。日本の学校には、どうしても形式や秩序を重んじすぎるあまり、閉塞(へいそく)感のある雰囲気になってしまうところが少なくなかったのではないでしょうか。そういう空気が、子どもたちの自然な発言を抑え込んでしまっているのだと思います。