明治維新後も「外来語」を避け
独自の階級名を編み出した日本

 軍隊における階級は、「誰が何を指揮できるか」を示す「ラベル」だ。戦場で上下関係を瞬時に把握するために不可欠な、軍隊の根幹をなす制度である。

 階級の起源は中世ヨーロッパに遡る。中世の欧州には常備軍(平時・戦時を問わず常設されている軍隊)がなく、国王が戦争のたびに封建領主を動員していた。

 領主が率いる兵士集団の指揮官は、ラテン語の「頭」に由来する「Captain」と称されるようになった。これが現代における空・陸軍の「大尉(Captain)」という呼称の源流となった。

「将補、1佐、3尉…」自衛隊の階級名が“ややこしい”根本理由、政府主導の「欧米化」に現役隊員も賛成!?訓練に臨む陸上自衛隊員 (出典:陸上自衛隊公式ホームページ

 16世紀になると、スペインで複数の中隊をまとめた「縦隊(Columna)」が置かれる。そこから発展した「Colonel」が、複数の部隊をまとめる指揮官の呼称として広く定着し、空・陸軍の「大佐」の由来となった。

 一方で、海軍の大佐は「Captain」、大尉は「Lieutenant(ルーテナント)」と呼ばれており、空・陸軍における呼称とは異なっている。

 その要因は、帆船時代の海軍軍艦に、戦闘を指揮する「Captain」と船を操る「Master」という二つの指揮系統が併存していたためだ。15世紀以降に両者が統合される中で、前者が公式な階級へと変化した。

 ここで日本に目を向けると、明治時代に軍隊を発足させるに当たり、これまで述べてきた海外発の階級名を「外来語」として採用しなかった。

 その代わりに、基本的な階級構成は踏襲しつつ、律令制の四等官や古代中国の官職名から「将」「佐」「尉」といった漢字を選び、「大・中・少」などで序列を示す体系を作った。

 この階級名は約70年間、第2次世界大戦の終結まで使われた。他国にも影響を与え、中国や韓国、北朝鮮といった漢字文化圏の国では今もこのシステムが使われている。

 しかし日本は敗戦後、こうした呼称から距離を置いた。