「歩兵→普通科」「駆逐艦→護衛艦」
軍事用語をかたくなに避けるネーミング

 さて、こうしたデメリットを考慮して、自衛隊のOB組織である「隊友会」は、階級呼称の変更を繰り返し提言してきた。

 その効果もあったのか、呼称変更に向けて政府が動き出しているわけだが、この施策を「旧軍への回帰」「自衛隊の国軍化」を招くと危惧する声も根強い。

 というのも、自衛隊は「旧軍との断絶」の象徴として、階級名の他にも、あえて軍隊色を弱めた独自用語を駆使してきた。

 例えば、一般的な軍隊では「歩兵」「砲兵」「工兵」といった任務ごとの職務の分類を「兵科」と呼ぶ。

 一方、自衛隊では兵科を「職種」と言い換え、歩兵を「普通科」、砲兵を「特科」、工兵を「施設科」と呼んでいる(現政権はこれも見直すとしている)。

 また、海自では駆逐艦を「護衛艦」と言い換えている。今では当たり前に使われている「戦車」も、1962年までは「特車」と呼ばれていた。

 全ての軍事用語を言い換えているわけではないが、自衛隊はこうした「慎重すぎる対応」を推し進め、「旧軍とは別物である」という姿勢を強く打ち出してきた。

 にもかかわらず、高市政権は安保政策に慎重だった公明党と連立解消したことを機に、名称変更に向けて一挙に動き出そうとしている。この流れを、現職の自衛官はどう見ているのだろうか。

 筆者が取材した自衛官の反応は、賛否が分かれた。ただし賛成派の方が多く、十数人に話を聞いた中で、賛成派と反対派の比率は4対1程度だった印象だ。

  まずは反対派の意見を紹介しよう。

「80年近い歴史を持つ自衛隊には、自衛隊の文化があってよい。呼称を変えても防衛力は強化されない。今は台湾有事に備えて、新体制への移行と国民の理解を得ることが重要。階級の議論は今ではない」

 とある海上自衛隊の将補は持論をこう述べた。昨今の情勢を踏まえ、防衛力の強化に直結する施策を優先するべきだという見解だ。