事務所関係者の目から解き放たれた美里佳さんは、真っすぐに繁華街の一角にある、のれんのかかった個室居酒屋の前でタクシーを降りました。
後で精算の際に移動距離の矛盾が出ないのか?
タクシー会社に美里佳さんが降りた場所を照会されたら?
など、後で詰められかねない要因を残していると考える余裕もないほど会いたい人がいて、その人にのめり込んでいるのかもと、思案をしながら監視している間、美里佳さんはお店の前でスマホを操作していました。
その数分後、スーツ姿の男性が現れ、2人は一言、二言言葉をかわすと並んで店内に入っていきました。
並んで歩く距離は近く、目線を合わせながら笑顔で話す様子を撮影しながら「これは黒かな」と思いました。
この居酒屋は木造の古風な造りで、個室同士が障子で仕切られている、大人の隠れ家のようなお店でした。
私たちは幸運にも隣の個室を確保できました。
男性がテーブル越しに身を乗り出した!
ついに決定的な瞬間か?
壁に耳を当てると、時折会話が聞こえましたが、詳細までは分かりませんでした。しかし、美里佳さんも男性も、どちらも敬語がなくフランクな言葉遣いから2人が親密であることはよく分かりました。
よくよく個室の中を調べてみると、完全ではないにしても、隣室内の様子がうかがえる欄間の隙間を発見することができました。
カメラを仕掛け、2人の胸元からテーブルの上の様子を捉えることができたため、2人の動き次第では「黒の証拠」を押さえられる可能性のある態勢を敷くことができました。
カメラの映像を無線接続したモニターで監視していると、食事が進み、お酒が3杯目になった頃、空気が変わりました。
男性が、テーブル越しに身を乗り出しました。
美里佳さんは、うつむいていましたが、顔を上げました。
そして、男性が彼女の手を取りました。
顔は映っていないため決定的ではないにしても、男女が個室でこのような動きを撮られたら、弁解はとても難しい状況です。
写真だけを見れば「中年男性と密会するアイドル」
悪意をもって動画を切り取れば「手を握る恋人関係」
炎上は避けられない証拠になり得ます。







