そこには「清純派の裏切り」「禁断の密会」「恋愛禁止の崩壊」などと書かれていました。

 私の理解できていない様子に、羽並氏はちょっといら立ったように「この言葉に合うような映像はありますか?それっぽく見えるような加工が可能な映像でもいいんです」

 私はやっと理解できました。

 美里佳さんが黒だった場合の炎上用ニュース記事のタイトル案があり、それにふさわしい映像が欲しいということでした。

 今回の調査は美里佳さんを守るためではなく、ゴシップとして使えるかどうかの確認だったのです。

「もし黒なら、話題になるんです!炎上も戦略なんですよね。片岡さんもゴシップ記事くらいご覧になるでしょ?ゴシップはグループを有名にするんですよね」

 羽並氏の声は淡々として悪びれた様子はなく、むしろ合理的な口調でした。

 無言の私に対して、羽並氏は明らかな作り笑いで「白なら白でいいんですよ。美談として使えますし。でも正直黒なら、もっとよかったです」

 悪意はなく、計算だけがある態度と口調でした。

探偵芸人が熱愛ともとれる
2ショット写真を報告書に載せなかったワケ

 私は、今回の調査目的である「恋愛禁止違反」の証拠に該当しないため、無駄な誤解を生むような手を握る写真は報告書から除外していました。しかし、調査結果の裏付けのために、男性が差し出した一枚の古い写真の場面は掲載しました。この報告書からは「恋愛禁止違反」は全く読み取れないものでした。それ以上に報告すべき写真はないことを伝えて、事務所を後にしました。

 数日後、羽並氏から電話がきました。

 挨拶もなく「本当に何もありませんか?距離が近い写真とか、切り取り方次第で印象は変わりますよね?」

 その言葉は、質問ではなく誘導が目的でした。

 事実探しではなく、黒に見せられる部分をまだ探していました。

 私は「ありません」とだけ言って、沈黙しました。

 羽並氏は不自然なほど静かな声で「なんとかならないですか?」と。丁寧な言葉の奥に焦りが滲んでいました。

 私が沈黙を続けていると羽並氏は「これは美里佳が売れるためなんです! 彼女の将来のためです!」と懇願するような声で叫びました。