しかし、その次の瞬間、私は違和感を覚えました。

 その違和感とは会話の内容でした。

 周囲の個室の話し声が小さくなったため、障子越しに会話が聞こえてきたのです。

「お父さんによく似てきたな」という男性の声。

 美里佳さんは涙声で「この写真、ずっと持っていてくれてたんですね」

 男性が差し出した一枚の古い写真をカメラが捉えました。

 3~4歳の小さな女の子を、30代前半くらいの男性2人が両方から抱っこしている写真でした。

 その後の会話から、女の子は美里佳さん。男性の1人は今、美里佳さんの目の前にいる男性の若かりし日の姿。もう1人の男性は亡くなった美里佳さんの父親だったのです。

 恋人かもと思われた男性は、美里佳さんの亡き父の親友だったのです。

 男性は、美里佳さんが小学校の時は参観日に出席したり、アイドルとしてデビュー前のオーディションに落ち続けていた頃も、父親同然で常に支えてきた存在だったことが、2人の思い出話から理解することができました。

 ずっとずっと、最低でも週に一度は晩御飯を一緒に食べにきていたのでした。

 手を握ったのは、恋人同士のそれではなく、父を思い出して涙を流した娘を、支える“父の親友”の手だったのです。

完璧な調査を終えて報告
事務所担当者の信じられない言葉とは

 居酒屋を出て羽並氏に報告しました。

「交際の事実は確認できず、親族同様の関係と判断します」

 羽並氏は弾んだ声で「そうでしたか!それはよかった!安心しました。お手数ですが報告書をまとめていただきましたら、弊社にてご報告をお願いいたします」

 私としても完璧な仕事ができたことに、とても満足しました。

 2日後、報告書をまとめ終わり、羽並氏の都合に合わせて事務所に伺いました。

 笑顔で迎え入れてくれた羽並氏に、報告書を提示して調査結果を説明しました。

 笑顔を絶やさず最後まで聞き終わると、机をトントンと指先でたたきながら報告書を見直した後に「そうですか、ご苦労様でした」。その後に続いた羽並氏の言葉を私はすぐに理解できませんでした。

羽並氏「ちなみに、誤解を招くカットとかはありませんか?」
片岡「誤解?誤解を招くとはどういうことですか?」

 羽並氏は無言で、A4の紙を渡してきました。