私には「彼女の将来のため」などと自分の正義で言ってしまう、自分を悪だと思っていない羽並氏は、明らかに美里佳さんの味方とは思えませんでした。
美里佳さんが守られていると思っている場所は、数字の計算しか考えていません。
敵は外ではなく味方の中にいるのです。
アイドルグループ担当者の暴走を止めた
普通に取り交わされる、調査の契約内容とは?
私は「事実以上のことはできません」と丁重に断りました。
電話の向こうで羽並氏の息が止まる音がして、しばしの沈黙の後、羽並氏は低い声で「そうですか」と言いました。
だが、その「そうですか」には、失望よりも、計算のやり直しが含まれていたように思えました。
私は「もし事実と異なる内容を調査報告の一部として使用されるようなことがあれば、それは探偵業法が禁じる違法目的での利用に該当する可能性があります。また、虚偽や誇張によって第三者の名誉を傷つけた場合には、依頼者ご自身が名誉毀損等の民事・刑事責任を問われる可能性もあります。契約時にも、調査結果を公序良俗に反する目的で使用しないことをご確認いただいております。調査報告の利用については、その点を十分にご理解のうえ、慎重にご判断ください」と言いました。
長い沈黙の後、羽並氏は「弊社としても事実以外のことを発信するわけないじゃないですか!」と明るく笑いながら、「また何かありましたらよろしくお願い致します!失礼しまーす!」と電話を切りました。
その後、注意して美里佳さんのニュースやSNSなどを見ていましたが、ゴシップになるようなことはありませんでした。
これまで「暴いてほしい」と言われたことはありません。「助けるために調べてほしい」と、何度か相談されました。
探偵業法にもある公序良俗に反する場合は、調査の中断や結果をお渡しできないことを、契約時に念入りに認識を合わせて契約しています。
探偵の調査結果は依頼者を助ける武器になりえます。
使い方次第では、対象者を陥れる武器にもなります。
それを手にする依頼者の本当の意図を見抜くのも、探偵にとって必要なスキルです。
「調査結果の正しい使い方を徹底する探偵」。 点と点が線になる探偵トークでした。
※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。







