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検索ユーザーがサイトへ遷移しなくなる「ゼロクリック問題」でメディアが沈む中、noteはAI経由の流入で「想定の4倍」という驚異的な数字をたたき出した。加藤貞顕CEO(最高経営責任者)が東京大学の松尾・岩澤研究室(松尾研)で学んだAI戦略が結実した格好だが、アルゴリズムというブラックボックスに依存する構造は、常に「はしごを外される」リスクと隣り合わせだ。長期連載『メディア興亡』内の特集『note解剖』#5で、業界を主導する対価還元プロジェクトの勝算を問う。(フリーライター 松田晋吾)
3回に2回は遷移せず、メディアの危機
Wikipediaを圧倒する「流入4倍」の謎
「今日の大谷翔平選手の結果を教えて」。グーグル検索エンジンにそう打ち込むと、AIが「6回無失点の好投を見せた」と即座に要約する。スポーツサイトを開く必要はもうない。
検索エンジンへのAI標準搭載に加え、ChatGPT、Geminiといった生成AIサービスの普及により、検索ユーザーがコンテンツサイトに遷移しなくなる「ゼロクリック問題」が急速に広がっている。メディア企業への打撃は大きく、検索流入に依存してきた大手デジタルメディアはPV(ページビュー)数が激減し、ニュース部門の縮小・売却を断行した。また、他のSEO(検索エンジン最適化)メディアでもアクセス数の大幅減が顕在化している。
業界全体が閉塞感に覆われる中、インターネット行動ログ分析のヴァリューズとnoteが2025年10月に公表した共同調査の結果がメディア関係者に衝撃を与えた(下図参照)。生成AIに引用されるだけで終わらず、サイト訪問につながる設計として、noteの存在が浮き彫りになっているという内容だった。
調査によると25年9月のグーグル検索セッション数は約61.8億回。そのうち他サイトへ流入するのは約22.6億回で36.5%にとどまる。3回に2回は、AIによる要約情報の閲覧などにとどめ、他のサイトに遷移していないという実態が明らかになったのだ。いまやコンテンツ発信者は、AIに取り上げられ、なおかつ自サイトへの流入を確保することに関心を移さざるを得なくなった。
生成AI経由の流入を得るには、まずAIに引用され、その参照リンクを通じてユーザーを呼び込むという2段階が必要になる。25年1~9月に51カテゴリー・2791サイトを分析したところ、検索エンジンからの流入が多いサイトほど生成AI経由の流入も多いという強い相関が確認された。生成AIもウェブ上のコンテンツをクローリング(自動巡回)して回答を生成するため、検索流入とは連動する関係にある。
しかしこの相関から大きく外れているサイトが一つあった。noteだ。検索経由の流入規模から統計的に見込まれる生成AI経由の流入数と比較すると、実に4倍もの流入を記録していた。つまりnoteは「生成AIに引用されやすく、かつそこから遷移しやすい」という二重の強みを持っていたのだ。
対照的なのがWikipediaだ。生成AIからの引用頻度は高いものの、参照リンクをクリックして詳細を確認しようとする行動を誘引できていない。「生成AIに引用されやすいが、遷移しづらい」特徴を持つ典型例だ。
検索エンジンの回答で完結し、サイトを訪れる必要がなくなる。そんな「ゼロクリック」の荒波にのまれ、既存メディアがPV激減にあえぐ中、noteだけが統計上の予測を大きく上回る「生成AIからの流入」を確保している。なぜ他の名だたるサイトですら成し遂げられなかった「要約の先」への誘導に、noteは成功したのか。次ページで明らかにする。








