「周りも積み立ててる」夫婦で月30万円の見切り発車

「きっかけは、2024年に始まった新NISAでした。仕事柄、トレンドには敏感でありたいし、周りの同僚も『積み立ててないやつは損してる』なんて言う。だから、ろくに調べもせずに、夫婦で月30万円という強気な金額でつみたて投資を始めたんです」

 昭雄さんは、ご自身の家計の正確な状況を把握していませんでしたが、「これだけ収入があるのだから、少々投資に回しても生活が揺らぐことはないだろう」と楽観視していました。一方の千恵子さんは、家計状況を漠然とは把握しており、「毎月30万円も投資に回すのは厳しいのでは……」と不安を感じていました。それでも、バリバリ働いてたくさん稼いでくる夫が、大丈夫だというなら大丈夫なのだろうと、あえて反対はしなかったそうです。

 このように、家計の「実数」があいまいなまま、ある種の見栄と焦りに突き動かされて投資をスタートさせたことで、馬場家の資金繰りは急速に悪化していきました。

月収80万円でも毎月10万~20万円の赤字が生まれるカラクリ

 収支を整理してみましょう。手取り月収80万円に対し、30万円を投資に回せば、残る生活費は50万円です。ですが、彼らの生活水準は「月80万円」のまま据え置かれていました。家賃が約20万円、食費が約15万円、水道光熱費が5万円。これだけで、すでに40万円が消えます。ここにご夫婦それぞれの小遣いやお子さん関連の支出、週末に家族で楽しむテーマパークや水族館などの娯楽費を加えると、毎月10万~20万円の「赤字」が出る計算になります。

 では、なぜ今まで破綻に気づかなかったのか。それは、ほぼすべての支払いをクレジットカードで済ませていたという要因が強いでしょう。不足分はボーナスで補填すればいい、という考えが染み付いていました。ところが、投資額が膨らみ、ボーナスでも補いきれなくなると、今度はカードのキャッシングに手を出し始めます。複数のカードから借り入れを繰り返すうちに、雪だるま式に負債が膨らんでしまったというわけです。

 家計状況を正しく把握できていれば、いきなり30万円を積み立てる無謀な判断には至らなかったはずです。逆に「30万円」を死守したいのであれば、高額なデリバリーや外食を見直す、あるいは光熱費やその他の固定費にメスを入れるといった工夫ができたでしょう。

 無計画に「得」の文字に惹かれ、無理な金額を投資に投じたことで、生活費のために年利15%近い借金を作るという、あまりに本末転倒な状況を招いてしまいました。