やっぱり納得できない!
税務署に匿名で通報することに
相続税申告後でしたが、恭子さんはどうしても腑に落ちないため、生前に母が利用していた銀行に対し、過去10年分の取引履歴を請求しました。銀行は一定期間の取引履歴を保管しています。そこで、取得して履歴を見た恭子さんは、妙な点に気付きました。複数回にわたり不自然な高額出金が存在していたのです。
「これは…やっぱり何かあるのでは?」
そこで、恭子さんは税理士に相談しました。
「貸付金が実在するなら、お母様の相続財産は増えます。つまりあなたの相続税も増える可能性があります。それでも“正しく分けたい”というなら、税務署に情報提供するという方法もありますよ」
税理士が言う「情報提供」とは、国税庁が設けているフォームなどを通じて、脱税・申告漏れの疑いを税務当局に知らせる制度です。恭子さんは文夫さんを通報することになるため悩みましたが、「兄だけが得するのは納得できない。きちんと法的に正しく分けたい」と思い、情報提供に踏み切りました。
「母から、生前に兄へ3000万円を貸したと聞いている。兄はそれを認めず相続財産に含めず申告した。不自然な出金もあるので調べてほしい」
約1年後…税務署から
突然届いた「相続税調査のお知らせ」
情報提供から約1年後、税務署から松岡家に通知が届きました。
「相続税申告について、税務調査を実施します」
文夫さんにとっては青天のへきれきでした。恭子さんが情報提供を行ったことをきっかけにやはり税務調査が行われたのです。兄妹間に亀裂が入ったものの、適正な遺産を得るためには、恭子さんはやむを得なかったと考えています。
税務調査が入ったらどうなる?
円満な相続税申告を目指すコツとは
では、税務署はどのように税務調査を進めるのでしょうか。相続税申告に精通する大阪府枚方市に事務所を構える中井学税理士に聞きました。
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中井学税理士:本事案では、税務調査で母の預金履歴・長男の資産状況・当時の金銭移動などが徹底的に調べられたでしょう。貸付金の存在が一定程度認められた場合は、相続財産に追加計上されたと考えられます。







