徹底的なやさしさの中に
本当の厳しさがある

 ここまでお話ししたように、エンパワメント型マネジャーはとても懇切丁寧で、部下のことをしっかり見守り、サポートするという印象を持たれたと思います。

 しかし、世間ではGoogleをはじめとする外資系企業はとても厳しい職場で、実績を上げなければ、すぐにクビになってしまう怖いところという印象を持つ人もいるでしょう。この2つのことは、一見矛盾するように見えるかもしれません。

 これは、一言でいうと「徹底的なやさしさの中に、本当の厳しさがある」ということです。

 私自身、子どものころに母とぶつかったことがあります。

 原因は些細なことでしたが、母はいつも私の考えの甘さや矛盾を静かに、しかし筋道を立てて指摘しました。あまりに理が通っていて、反論の余地がなく、自分の未熟さと向き合うほかはない――そんな経験でした。

 エンパワメント型マネジャーもそれに似たところがあります。上司が粉骨砕身、親身になってここまでやってくれるんだから、私たちもやる。それでも結果が出なければ、もうそれは自らの至らなさを感じ、出直すしかない――そういった感じです。

『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』書影Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(中谷公三、諸橋峰雄、水野ジュンイチロ ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 だから、Googleという会社は、社員にとって天国のような職場であると同時に、逃げ道がなく、言い訳のできない厳しい職場でもあるのです。

 かくいう私たちも、これまでのマネジャー経験の中で、部下が与えられた役割にフィットせずに苦労し、パフォーマンスがなかなか出せないという状況に数え切れないぐらい遭遇してきました。それは本人にとっても、周囲にとっても、大変不幸な状況です。そんなとき、私たちマネジャーはさまざまな処方箋を持って、事態を収拾していきます。

 あるときは短期的なスランプで、時間とともに解決することもありますし、回復に何カ月もかかるケースもあります。部署を異動することでパフォーマンスが戻るようなこともあります。

 このように、厳しさの中にやさしさが同居しているのが、「エンパワメント型マネジメント」の特徴なのです。