ビジネスの場における「雑談」を、雰囲気をよくするための潤滑油に過ぎないと考えている人は多いだろう。しかし、世界に目を向けると、一流のビジネスマンがする雑談はとりとめのない会話では終わらない。人材・組織開発のスペシャリストとして世界中で活躍する著者ピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、明確な意図をもって雑談に臨めば、強力な武器になるという。
雑談の最初のミッションは「確認作業」をすること
日本のビジネスマンは、雑談を本題に入る前のイントロと考えて、その日のアジェンダとは無関係な話をしていますが、海外の仕事ができるビジネスマンは、アジェンダを達成するための「下準備」として雑談を活用しています。
彼らが、雑談の最初のミッションと考えているのは「確認作業」です。
初対面であれ、何度も顔を合わせている相手であれ、目の前の相手の立ち位置や役割、その日の体調や心構えなどを、雑談を通して確認しています。
1相手の状況の確認
2ビジネス状況の確認
3新たに必要となる情報の確認
これから大事な話を始めるのですから、相手にその準備ができているのか……を事前に確認することが第1段階です。
相手が明らかにバタバタしているようであれば、「何かありましたか?」とか、「お疲れですか?」と聞いてみて、本題に入れるかどうかを判断します。
「仕事上の問題が発生している」とか、「出掛けに妻とケンカした」など、こちらの目に見えないトラブルが起こっている可能性もありますから、雑談を通して相手のコンディションや心の準備の状況なども、あらかじめ確認しておく必要があるのです。
この確認作業はビジネスや商談の基本中の基本ですが、日本のビジネスマンは意外にスルーしているようです。
「お世話になります。今日は暑いですね」と挨拶を交わし、軽い世間話などが終わると、すぐに本題に入ってしまうのです。
相手の状況を観察することなく、「それではスライドを用意しましたので、ご説明させていただきます」とプレゼンテーションを始めてしまったのでは、相手の曖昧な表情の意味や、その場に漂う微妙な空気感を、簡単に見過ごすことになります。
海外の一流のビジネスマンは、まず最初に相手の様子を観察して、少しでも違和感を感じたら、次のような話を切り出します。
「貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。本日は詳しい資料やスライドを準備しておりますが、すぐにプレゼンを始めてもよろしいでしょうか?何か新しい課題があるとか、違う方向性が見えたということであれば、先にお聞かせください」