元Google人事が解説、世界の一流が「顧客との雑談」でさりげなく確認する3つのこと写真はイメージです Photo:PIXTA

ビジネスの場における「雑談」を、雰囲気をよくするための潤滑油に過ぎないと考えている人は多いだろう。しかし、世界に目を向けると、一流のビジネスマンがする雑談はとりとめのない会話では終わらない。人材・組織開発のスペシャリストとして世界中で活躍する著者ピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、明確な意図をもって雑談に臨めば、強力な武器になるという。

※本稿は、ピョートル・フェリクス・グジバチ『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を抜粋・編集したものです。

雑談の最初のミッションは「確認作業」をすること

 日本のビジネスマンは、雑談を本題に入る前のイントロと考えて、その日のアジェンダとは無関係な話をしていますが、海外の仕事ができるビジネスマンは、アジェンダを達成するための「下準備」として雑談を活用しています。

 彼らが、雑談の最初のミッションと考えているのは「確認作業」です。

 初対面であれ、何度も顔を合わせている相手であれ、目の前の相手の立ち位置や役割、その日の体調や心構えなどを、雑談を通して確認しています。

1相手の状況の確認
2ビジネス状況の確認
3新たに必要となる情報の確認

 これから大事な話を始めるのですから、相手にその準備ができているのか……を事前に確認することが第1段階です。

 相手が明らかにバタバタしているようであれば、「何かありましたか?」とか、「お疲れですか?」と聞いてみて、本題に入れるかどうかを判断します。

「仕事上の問題が発生している」とか、「出掛けに妻とケンカした」など、こちらの目に見えないトラブルが起こっている可能性もありますから、雑談を通して相手のコンディションや心の準備の状況なども、あらかじめ確認しておく必要があるのです。

 この確認作業はビジネスや商談の基本中の基本ですが、日本のビジネスマンは意外にスルーしているようです。

「お世話になります。今日は暑いですね」と挨拶を交わし、軽い世間話などが終わると、すぐに本題に入ってしまうのです。

 相手の状況を観察することなく、「それではスライドを用意しましたので、ご説明させていただきます」とプレゼンテーションを始めてしまったのでは、相手の曖昧な表情の意味や、その場に漂う微妙な空気感を、簡単に見過ごすことになります。

 海外の一流のビジネスマンは、まず最初に相手の様子を観察して、少しでも違和感を感じたら、次のような話を切り出します。

「貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。本日は詳しい資料やスライドを準備しておりますが、すぐにプレゼンを始めてもよろしいでしょうか?何か新しい課題があるとか、違う方向性が見えたということであれば、先にお聞かせください」

 初対面であっても、相手の様子をきちんと観察する習慣を身につければ、微妙な違和感はすぐに察知できます。こうした問いかけをすれば、状況の変化に応じて素早く対応することが可能になります。

 極端なケースでいえば、「予算がなくなったから、御社の提案にはお応えできない」という相手の反応を最初に引き出すことができれば、無駄なプレゼンをすることなく、新たな方向性に沿った話し合いを素早く始めることができます。わずか数分の確認作業によって、その後の結果が大きく違ってくるのです。

雑談で相手企業の「意思決定」の流れを確認する

 これは意外な盲点になっていることですが、相手企業がどのような流れで判断を下して、誰が最終的な意思決定者なのかを確認しておくことも雑談の大切な目的です。

 相手がどんなプロセスを経て決定するのか、誰が予算を握っているかを知らないまま、ただ応対してくれただけの相手に全力投球で売り込んでも意味がありません。担当者に決定権があるのか、決定権がないならば誰にプレゼンすればいいのか、早い段階で知っておく必要があります。

 日本のビジネスマンは、相手に遠慮しているのか、気を遣っているのか、誠意を伝えることばかりに注力して、決定までの流れを曖昧にしたまま商談を進めているケースが少なくないようです。

 世界のビジネスマンは、雑談の際にストレートに質問して、決定までのプロセスを把握してから本題に入っています。

 そのあたりを不透明にしておくのが日本式の商談なのかもしれませんが、それとなく探り出すような工夫を続けることが大切です。

 少なくとも、「何が意思決定の決め手になるのか?」とか「意思決定の障害になる要因は何か?」くらいは雑談で聞き出しておく必要があります。

 ビジネスの相手がグローバル企業や外資系企業であれば、「どなたが意思決定者ですか?」とストレートに聞いても失礼には当たりません。相手も当然のこととして答えてくれますし、こちらから質問しなくても相手が先に伝えてくれることもあります。

雑談を通じて「ライフタイムバリュー」を高める

 ビジネスの雑談には、もうひとつ大きな目的があります。顧客の「ライフタイムバリュー」(顧客生涯価値)を高めることです。

 ライフタイムバリューとは、取引を開始してから終了するまでの間に、顧客がどれだけの利益をもたらしてくれるのか……という価値基準です。