したがって、アメリカが軍事攻撃を通じて革命防衛隊に打撃を与えたとしても、民衆が一気に政権打倒へとなだれ込む可能性は高くないと考えるべきではないだろうか。

 体制転覆が短期間で実現する可能性は、現段階では限定的と見るのが妥当だろう。

イラン現体制は「自滅」を選ばない

 イランは中東各地で武装勢力を支援し、地域の不安定化を招いてきた。その意味で国際社会からはテロ支援国家と見なされてきたが、だからといって自殺的な国家行動を取るわけではない。

 イラン体制は「国家」として存続することを最優先に行動してきた。

 仮にアメリカに対して全面的な報復に踏み切れば、圧倒的な軍事力を呼び込み、体制崩壊のリスクを一気に高める。そう考えれば、現体制の目標は「逆転勝利」ではなく、いかに生き延びるかにある。

 核開発、ミサイル戦力、代理勢力はいずれも使い切る兵器ではなく、交渉カードである。

 仮に報復が抑制的であったとしても、それは弱腰だからではなく、体制がなお合理的判断能力を維持している証拠と見るべきだろう。

 イランは長い歴史があり、現在も限定的ながら民主選挙制度を組み込んでいる。そういう意味では、宗教的最高指導者の排除によって民主化にシフトする可能性はある。ただし、ハメネイ師は実際には「象徴的存在」に近く、組織トップとして辣腕を振るってきたとは言いがたい。

 ハメネイ師が排除されたところで、実際に革命防衛隊を動かしている体制そのものは温存されており、民主化の道はかなり険しい。

 歴史が示すとおり、権力の空白を最初に埋めるのは、理想を語る知識人ではなく、組織化された暴力装置を持つ勢力である。革命防衛隊はイラン国軍に匹敵する戦力を持ち、かつコングロマリットによって経済的にも担保された「もう1つの国軍」である。

 王党派の象徴であるレザー・パフラヴィー元皇太子に一定の支持が集まっているものの、国内に革命防衛隊に対抗できる組織的基盤を持っていない以上、革命防衛隊の弱体化が即、民主化に結びつくというのは楽観に過ぎるだろう。